Zini, Eric, et al.
"Glucose concentrations after insulin‐induced hypoglycemia and glycemic variability in healthy and diabetic cats." 
Journal of Veterinary Internal Medicine 32.3 (2018): 978-985.

PubMedリンク PMID:29603806
本文:無料公開あり(全文

タイトル: 健康な猫と糖尿病の猫におけるインスリン誘発性の低血糖後の血糖値と血糖値の変動

==アブストラクト===
背景:糖尿病の猫における低血糖後高血糖についての情報はほとんどなく、低血糖とそれに引き続く高血糖の間の因果関係については明確ではない。血中グルコース濃度の変動は、高い血糖値変動の表しているだけかもしれない。

仮説:健康な猫においてインスリンは低血糖後高血糖を誘発し、糖尿病猫においては低血糖後高血糖は糖尿病の調節不良と関連して血糖値の変動を増加させる。

動物:健康な猫6頭、糖尿病の猫133頭。

方法:インスリン(プロタミン-亜鉛およびdegludec;0.1-0.3 IU/kg)を健康な猫に投与した。ポータル血糖測定器を用いて血糖値曲線を作成し、低血糖後高血糖の曲線の割合を決定した。インスリンで治療した糖尿病の猫の低血糖を示す血糖値曲線から得られたデータには、低血糖後高血糖のある猫とない猫とのデータを含めた。低血糖後高血糖は血糖値<4mmol/L(72mg/dl)につづく12時間以内の血糖値>15mmol/L(270mg/dl)と定義した。血糖の変動性は血中グルコース濃度の標準偏差として計算した。

結果:健康な猫において、すべてのインスリン投与は低血糖を招いたが、低血糖後高血糖は観察されなかった。血糖変動性はインスリン製剤間で差はなかった。低血糖を伴う糖尿病猫の中では、33頭(25%)が低血糖後高血糖を示した。低血糖後高血糖がなかった猫と比較すると、インスリンの日用量が高く(1.09±0.55 vs 0.65±0.56 IU/kg;p<0.001) 、血清フルクトサミン濃度が高く(565±113 vs 430±112 μmol/l;p<0.001)、寛解に至る頻度が低く(10% vs 56%;p<0.001)、血糖変動性が大きかった(8.1±2.4 vs 2.9±2.2 mmol/L;p<0.001)。

結論と臨床的重要性
:インスリン誘発性の低血糖は、健康な猫においては低血糖後高血糖を引き起こさなかったが、低血糖のある猫では25%で起こり、それは特に糖尿病のコントロールが不良な場合であった。血糖変動性は、低血糖後高血糖がある猫で増加した。 


==訳者コメント==
文中の血糖値の単位mmol/lは簡易的な式(18をかける)でmg/dlに変換して注釈しました。

糖尿病のコントロールが不良だから低血糖後高血糖がおこりやすくなるのか、低血糖後高血糖が起こりやすい状態だから糖尿病のコントロールが悪くなるのか、因果関係はこれだけだとわからないですね。