スイミングパピー症候群/スイマー症候群についてはまとまった報告がないので、症例報告を集めてみました。

1)
ミニチュアシュナウザーのスイマー症候群の在宅治療
2)
スイミングパピー症候群の臨床的管理の犬1例
3)
ラブラドールの仔犬2頭のスイミング症候群
4)デボンレックスの子猫とイングリッシュブルドッグの子犬のスイマー症候群
5)猫のスイマーパピー症候群
6)同腹仔全体がスイマー症候群に罹患した仔猫


1)
タイトルミニチュアシュナウザーのスイマー症候群の在宅治療
Kim, Sun-A., et al. 
"Home-care treatment of swimmer syndrome in a miniature schnauzer dog."
 
The Canadian Veterinary Journal54.9 (2013): 869. 
PubMedリンク PMID:24155492  本文:無料公開あり(全文

==アブストラクト=== 
50日齢の雌のミニチュアシュナウザーが起立不能、胸部の背腹扁平化、後肢筋肉の低形成、後肢関節の拘縮、パドリング状の肢の動き、およびパンティングのために来院した。その犬はスイマー症候群と診断された。集中的な理学療法とともに環境管理、栄養管理を含む在宅治療を40日間行い、完全に回復した。

2)
タイトル:スイミングパピー症候群の臨床的管理の犬1例
Vijayakumar, G., A. P. Nambi, and S. Prathaban.
"Clinical management of swimmer puppy syndrome in a dog." 
Intas Polivet 13.2 (2012): 321-323. 
PMID:なし 本文:無料公開あり(全文
==アブストラクト=== 
20日齢の雄のラプラドールレトリバーで、前肢が外側に巻かれ、後肢が広がった、スイミングパピー症候群 が観察された。綿の詰めものと包帯によって、病態は良好に治療された。子犬は滑りにくい粗い表面に置かれ、他の子犬と遊ぶことによって運動が促された。治療開始後12日までに、正常な子犬のような歩行が可能となった。

3)
ラブラドールの仔犬2頭のスイミング症候群
Yardimci, Cenk, et al.
"Swimming syndrome in two Labrador puppies." 
Kafkas Universitesi Veteriner Fakultesi Dergisi 15.4 (2009): 637-640. 
PMID:なし 本文:無料公開あり(全文
==アブストラクト=== 
 スイミングパピー症候群は、後肢と時には前肢もが側方に広がってしまう、新生児犬で観察されるまれな発達異常である。罹患した動物はしばしば、歩行しようとする時にうつぶせでスイマーのような動きをし、それは滑らかな床でより顕著になる。この症候群の原因は不明であるが、文書化されていない様々な理論が定式化している。
25日齢のラブラドールレトリバーの同腹仔2頭がこの研究の対象である。臨床的に、立ったり動き回ったりすることができず、肢が広がり、うつぶせで泳ぐような運動をし、肢の内転ができないことが観察された。神経学的検査は正常と判断された。両症例で両側の外側膝蓋骨脱臼が観察された。治療を始める前に、暑さ3cmの柔らかい敷物をケージの床に敷いた。治療過程で、両後肢の理学療法が開始され、1回5分、1日3回行われた。膝関節と股関節の穏やかな受動的な屈曲、伸展、内転を行なった。治療過程の6週間の最後に、両症例ともに肢の機能的活動が観察された。結果として、過去の研究で述べられているとおり、治療過程6週間の終わりには他の同腹仔と同じように歩けるようになり、漏斗胸の併発もなく予後は良好と結論づけた。 

4)
デボンレックスの子猫とイングリッシュブルドッグの子犬のスイマー症候群
Verhoeven, Geert, et al.
"Swimmer syndrome in a Devon rex kitten and an English bulldog puppy." 
Journal of small animal practice 47.10 (2006): 615-619.
PubMedリンク PMID:17004956  本文:無料公開なし

==アブストラクト=== 
3週齢のデボンレックスの仔猫と4週齢のイングリッシュブルドッグの仔犬が“スイマー症候群”で来院した。飼い主は何人かの獣医師に相談し、この病態の解決のためのゆちの方法として安楽死を提案された。仔犬には理学療法を行い、子猫には理学療法と包帯を行い、臨床徴候が解消され、数週間後には通常の歩行ができるようになった。集中的な理学療法と飼い主の献身により成功が導かれる可能性があると結論づける。 

5)猫のスイマーパピー症候群
Gomes, L. C. V. M., et al.
"Swimming puppy syndrome in cats." 
Acta Scientiae Veterinariae 43.1 (2015): 109.
PMID:なし 本文:無料公開あり(全文
==アブストラクト===
 背景:スイマーパピー症候群は、異常な仔犬の発育として特徴付けられており、猫ではまれであり、生後2-3週齢の間によくみられる。この症候群に罹患した仔犬は、後肢と時に前肢の歩行困難、外転、不全麻痺がみられる。推奨される治療には、滑らない床と柔らかい表面で、罹患した肢のまわりを包帯で巻き、理学療法を行うことが含まれる。この報告では、猫の同腹仔全体で起こったスイマーパピー症候群について報告し、この疾患の知恵用のタイプについての議論を強調する。
症例 :11日齢の仔猫たち(品種不明)が、運動障害で獣医病院に紹介された。仔猫の母猫は道路で見つかった。臨床検査では、仔猫はずっと
胸骨臥位のままで、後肢は伸展して側方に広がっている異常のみが観察された。検査のあと、 生後3週間での再評価をすることとした。25日齢では、胸骨臥位の重症度は軽減しているようだった。しかし、後肢は進展して外側尾側へ広がったままであり、 動き回るときに水泳に似た回転運動をしていた。胸部と骨盤のレントゲンでは、正常な骨密度と、骨関節の発達がみられた。臨床所見と病歴をもとにスイマーパピー症候群と診断された。治療として、後肢の足根部をバンド状の包帯で固定し、解剖学的位置に内転させた。包帯は、1日3回交換し、足根部に粘着テープとマスキングテープで固定された長方形の布を用いた。仔猫たちが1日の大半を過ごす部屋の床は、柔らかくて滑らないマットで覆った。仔猫たちは、1日1回10分間、粗いセメントの床を歩くよういも促された。包帯は40日齢まで15日間施され、仔猫たちは典型的な四足歩行の姿勢をとり、どんな床でも正常に歩けるようになった。
考察:猫では、スイマーパピー 症候群はまれであり、報告も少なく、1頭での罹患がしばしば観察される。しかし、今回の症例では同腹仔全体が罹患しており、遺伝的病因の可能性が強調された。早期診断とそれに続く治療が、治療とリハビリの成功に重要な要素であった。包帯により、仔猫は解剖学的および生理学的位置に肢を維持したまま、動き、身体運動と肢の屈曲、四肢強調の活性化を可能にした。様々な床が、皮膚病変の発症を防ぎ、歩行のための異なる衝撃力を生み出し、強度と筋緊張を増加させるために用いられた。これらの所見に基づくと、猫ではまれであるが、スイマーパピー 症候群は仔猫の時期の最初の数日間に診断することができ、適切な包帯(材料と形状)治療と、柔らかく滑らない表面、モニタリングによって、罹患した肢の完全なリハビリテーションが期待可能となる。 

6)
同腹仔全体がスイマー症候群に罹患した仔猫
Cardilli, D. J., et al. 
"Swimmer syndrome affecting an entire litter of kittens." 
Arquivo Brasileiro de Medicina Veterinária e Zootecnia 65.3 (2013): 705-709.
PMID:なし 本文:無料公開あり(全文
==アブストラクト===
スイマー症候群は、歩行および動き回る能力の遅れを特徴とする発達異常であり、15-20日齢の新生児でみられる。これらの動物は、常に寛骨大腿骨の明らかな外転を示し、後肢を側方尾側への動かす。
この症例報告では、スイマー症候群の雑種仔猫の同腹仔3頭(26日齢)について報告する。それぞれの動物は、理学療法と、後肢を曲げて体に近づけたままにする足枷包帯によって治療された。7日後には、すべての動物が正常な歩行を示し、この治療法が仔猫に対して治癒的な効果を持つことが示された。