Werner, Melanie, et al.
"Effect of amoxicillin‐clavulanic acid on clinical scores, intestinal microbiome, and amoxicillin‐resistant Escherichia coli in dogs with uncomplicated acute diarrhea." 
Journal of veterinary internal medicine 34.3 (2020): 1166-1176.


PubMedリンク PMID:32324947
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タイトル:合併症のない急性下痢の犬における臨床スコア、腸管細菌叢、およびアモキシシリン耐性大腸菌に与えるクラブラン酸
アモキシシリンの影響

==アブストラクト===
背景:有効性の根拠は限られているものの、抗菌薬治療は合併症のない急性下痢の犬に対していまだに頻繁に処方されている。

目的:急性下痢の犬において、クラブラン酸アモキシシリンが臨床的有効性をもつかどうか、糞便細菌叢への影響、およびアモキシシリン耐性大腸菌の割合、について評価すること。

動物:3日未満の急性下痢の犬16頭。

方法:前向きプラセボ対照二重盲検研究。家庭飼育犬を抗菌薬グループとプラセボグループにランダムに割り付け、臨床スコアを比較した。定量的PCR活性をもちいて腸管の細菌叢を分析した。アモキシシリン耐性の糞便大腸菌は、微生物学的手法を用いて半定量的に評価した。

結果
:治療群と対照群との間で臨床的な回復に差はなかった(10日目の犬急性下痢重症度指数:抗菌薬グループ 中央値 2[範囲 1-3、信頼区間 1.4-2.6]、プラセボグループ中央値 1.6[範囲 1-3、信頼区間 1.1-2.4]、p>0.99)。すべての犬が、来院後1-6日(中央値2日)で正常な臨床スコア(犬急性下痢重症度指数 ≦3)に回復した。糞便腸内毒素症指数(治療中:抗菌薬グループ 平均-2.6[SD 3.0、信頼区間 -5.1-0.01]、プラセボグループ均-0.8[SD 4.0、信頼区間 -4.2-2.5]またはその細菌分類群に有意な差はなかった。耐性糞便性大腸菌の割合は、クラブラン酸アモキシシリンによる治療中に増加し(中央値100%、範囲35-100%)、治療後3週間まで増加したまま(中央値10%、範囲2-67%)であり、それらは両方とも、いずれの時点でのプラセボグループよりも有意に高い割合であった(治療中 抗菌薬グループ中央値100% vs プラセボグループ中央値0.2%[p<0.001]、治療後 抗菌薬グループ中央値10% vs プラセボグループ中央値0.0%[p<0.002])。

結論と臨床的意義
:この研究により、クラブラン酸アモキシシリンによる治療は急性下痢の犬に対して臨床的利益がなく、治療後3週間も続くアモキシシリン耐性大腸菌の発生の素因となることが示唆された。これらの所見は、敗血症の徴候がない限り下痢の犬に抗菌薬で治療をすべきではないという国際ガイドラインの推奨を支持する。