Wennogle, Sara A., Christine S. Olver, and Sarah B. Shropshire.
"Coagulation status, fibrinolysis, and platelet dynamics in dogs with chronic inflammatory enteropathy."
 
Journal of Veterinary Internal Medicine (2021).

PubMedリンク PMID:33665845
本文:無料公開あり(全文

タイトル:慢性炎症性腸疾患の犬における凝固状態、線溶、および血小板動態

==アブストラクト===
背景:慢性炎症性腸疾患の犬における凝固状態はよくわかっていない。慢性炎症性腸疾患の犬における線溶活性と血小板動態はこれまで評価されていない。

目的:アルブミン濃度が正常な慢性炎症性腸疾患の犬と、蛋白漏出性腸症(PLE)がある慢性炎症性腸疾患の犬の凝固と線溶を、健康な対照群と比較して評価すること。トロンボエラストグラフィーの項目をグループ間の差と、臨床病理データとの相関として評価すること。慢性炎症性腸疾患の犬における血小板動態を報告すること。

動物:慢性炎症性腸疾患のある家庭飼育犬25頭(PLEなし 16、PLEあり 9);健康な対照群のビーグル14頭。

方法:すべての犬で組織因子+組織プラスミノーゲン活性化因子トロンボエラストグラフィーを行った。慢性炎症性腸疾患のある犬25頭中9頭で全血インピーダンス血小板凝集測定を行った。トロンボエラストグラフィーの項目と凝固データを、すべての慢性炎症性腸疾患vs健康対照、PLEのない慢性炎症性腸疾患vs健康対象、PLEのある慢性炎症性腸疾患vs健康対象、で比較をした。臨床病理学的データと凝固データは慢性炎症性腸疾患の犬で利用可能であり、トロンボエラストグラフィーの項目との相関を評価した。

結果
:慢性炎症性腸疾患の犬は健康な犬に比べて、最大振幅が高く(p<0.001)、血餅溶解時間が長く(p<0.001)、30分後の溶解率が低く(p<0.001)、60分後の溶解率が低く(p<0.001)、凝固亢進と線溶抑制が示唆された。分割すると、PLEのない慢性炎症性腸疾患の犬とPLEのある慢性炎症性腸疾患の犬では健康な犬に比べて、最大振幅が高く、血餅溶解時間が長く、30分後および60分後の溶解率が低かった。血清アルブミンおよび25[OH]D濃度と、血漿アンチトロンビンおよびフィブリノゲン濃度は、最大振幅と中程度に相関した。

結論と臨床的意義
:アルブミンが正常および低アルブミン血漿の慢性炎症性腸疾患の犬は健康な犬に比べて、トロンボエラストグラフィーをもとにすると凝固亢進状態にあると考えられた。線溶抑制の表現系を示す慢性炎症性腸疾患の犬もいた。