Hall, J. A., et al. "Comparison of serum concentrations of symmetric dimethylarginine and creatinine as kidney function biomarkers in cats with chronic kidney disease." Journal of veterinary internal medicine 28.6 (2014): 1676-1683.

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キーワード:CKD、SDMA、クレアチニン、GFR

==アブストラクト===
背景
:対称性ジメチルアルギニン(SDMA)はヒトにおいて推定糸球体濾過率を算出するための正確で精密なバイオマーカーであり、腎機能障害を評価するための血清クレアチニン濃度(sCr)よりも高感度のバイオマーカーである。

目的
:この回顧的研究の目的は、従来のsCrの測定による診断よりも前に猫の慢性腎臓病(CKD)の検出に血清SDMA濃度の測定が有用であることを報告すること。

動物
:慢性腎臓病の猫(n=21)、このうち3ヶ月以上高窒素血症が持続した猫(n=15)と30%以上GFRが低下しているが非高窒素血症の猫(n=4)、シュウ酸カルシウムの腎臓結石を持ち非高窒素血症の猫(n=2)を含む。健康な老齢猫(n=21)を同じ集団から選んだ。

方法
:病歴データから、もしくは高窒素血症の猫の保存された血清サンプルから、もしくは非高窒素血症の猫のGFRが測定された時点での、SDMA濃度(液体クロマトグラフィー質量分析法)とsCrの(比色分析)を回顧的に決定した。

結果
:血清SDMA(r=-0.79)とsCr(r=-0.77)の濃度はGFRと有意に相関した(両者ともにp<0.0001)。17/21頭の猫でsCrよりもSDMAの方が早期に上昇した(平均17.0ヶ月 範囲1.5-48ヶ月)。血清SDMAの感度(100%)はsCr(17%)に比べて高かったが、特異度は低く(91%vs100%)、陽性的中率も低かった(86%vs100%)。

結論と臨床的重要性
:CKDのバイオマーカーとしてのSDMAの利用は、猫のCKDをsCrよりも早期に検出することができ、CKDの進行を遅らせるための腎保護介入を開始することが望まれるかもしれない。


==本文から===
この研究はPet Nutrition Center, Hill’s Pet Nutritionによって行われている。


==訳者補足===
・回顧的なケースコントロール研究である点に注意が必要と思います。こうした限られた母集団では、特に陽性的中率はかなりの偏りがあるため、実際の臨床でそのまま用いることはできません。

・この結果の見方として、「CKDの猫ではSDMAは早期に上昇していた」と捉えることはできるかもしれませんが、「SDMAが上昇していたらCKDと診断して良い」とか「CKDが上昇していたらその後にクレアチニンも上昇するはず」とは言えないことに注意が必要です。

・疾患を早期に検出することと早期に治療介入をすることの是非については別問題であるため、分けて考えるべきですし、結論の文章などに惑わされないように気をつけなければいけないと思います。

・実際の臨床で使う場合にの注意点について「動物医療ジェネラリストの臨床推論」こちらのブログでとてもわかりやすく解説してあります。

・同じ文献について「動物医療ジェネラリストのぼっちジャーナルクラブ」でも、より詳しく検討されています。