Kelmer E, et al. 
"Effect of intravenous administration of tranexamic acid on hematological, hemostatic, and thoromboelastographic analytes in healthy adult dogs" 
Journal of Veterinary Emergency and Critical Care (2013).

PubMedリンク
本文:無料公開なし

==アブストラクト===
目的:健康な成犬において、トラネキサム酸(TA)の静脈投与による血液学的、止血的、 トロンボエラストグラフィー分析への影響を調べる。

デザイン:前向き研究

施設:大学の教育病院

動物:スタッフが飼育する健康な成犬11頭

測定と主な結果: 犬にトラネキサム酸をボーラス静脈投与し、続いて低速注入(CRI)を3時間行なった。トラネキサム酸投の投与前および与直後にCBC、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、Dダイマー、アンチトロンビン(AT)、フィブリノゲン、トロンボエラストグラフィー(TEG ※注 訳者コメント)の測定を行なった。嘔吐は最初に投与した2頭の犬で、20mg/kgおよび15mg/kgのボーラス投与直後に一時的に起こったが、CRI投与中には起こらなかった。そのほかの犬ではトラネキサム酸のボーラス投与の投与量を10mg/kgに減量し、ゆっくり投与したところ、嘔吐は起こらなかった。測定された全ての血液学的、止血学的分析はいずれも参照範囲内ではあったが、
トラネキサム酸投与後にトロンボエラストグラフィーLY30は有意に増加し、PT、トロンボエラストグラフィーRおよびA30値、Hct、ヘモグロビン濃度には有意な減少が記録された。

結論:健康な犬への10mg/kg緩徐なボーラス静脈投与と10mg/kg CRI 3時間投与はいずれも安全な方法であった。しかし、トロンボエラストグラフィーのA30、A60、LY30、LY60値に対するその効果は、期待される抗フィブリン溶解特性と一致しなかった。


==訳者コメント=== 
注)トロンボエラストグラフィー
血液の凝固線溶状態をグラフ化して評価できる方法です。止血能の評価や、凝固亢進や線溶亢進の程度を評価できます。外科的な止血能評価やDICの診断・分類に利用できます。
(参考:日本止血学会HP) 

・この研究の目的はトラネキサム酸の投与によるフィブリン溶解の抑制(≒線溶系の抑制)による止血効果の評価と推測されます(詳細は本文を参照)。そういった期待さえる効果が確認できなかったということは、トラネキサム酸による止血効果が確認できなかったということになります。
・しかし対象となった犬が健康、つまりそもそも線溶系が亢進していない状態での効果の測定であるため、線溶系が亢進した状態でのトラネキサム酸の効果の検討には不十分なデータです。
・少なくとも凝固線溶系に大きな異常をきたしていないような出血に対しては、トラネキサム酸はあまり効果を持たないのかもしれません。