Hillström, Anna, et al.
"Measurement of serum C-reactive protein concentration for discriminating between suppurative arthritis and osteoarthritis in dogs."
 
BMC veterinary research 12.1 (2016): 240.

PubMedリンク
本文:無料公開(PDF

==アブストラクト===
背景
:関節の痛みをもつ犬で、関節液内への好中球の浸出を特徴とする化膿性関節炎なのか否かを決定することは重要であり、それは診断検査と治療に影響を与える。この研究の目的は血清C反応性蛋白(CRP)濃度が、化膿性関節炎の犬と変形性関節症(OA)の犬との識別に利用できるかどうかを評価することである。さらに、関節疾患の犬と健康な犬で、血清および関節液のインターロイキン(IL)6濃度を測定し、血清CRP濃度との相関をみる。

方法
:関節の痛みのある犬が前向きに登録され、関節液検査とレントゲンまたは関節鏡による所見をもとに、化膿性関節炎または変形性関節症に分類された。健康なビーグルが対照群として登録された。CRPとIL-6濃度が犬特異的イムノアッセイで測定された。化膿性関節炎の犬と変形性関節症の犬を識別におけるCRPの性能を、すでに確率されているCRPの臨床決定限界(20mg/l)を用いて、ROC曲線とロジスティック回帰分析によって評価した。グループ間のCRPとIL-6濃度の比較は、t検定とスピアマン順位相関係数による相関を用いて行った。 

結果
:検体は31頭の化膿性関節炎の犬、34頭の変形性関節症の犬、17頭の健康な犬から得られた。関節疾患をもつ65頭中62頭がCRPの臨床決定限界を用いて正確に分類された。ROC曲線の評価と回帰分析はCRP濃度が化膿性関節炎と変形性関節症を識別し得ることを示した。化膿性関節炎の犬は、変形性関節症の犬に比べて血清CRP濃度と関節液のIL-6濃度が高かった(p<0.001)。変形性関節症の犬では、健康な犬と比較して関節液のIL-6濃度は高かったが(p<0.001)、血清CRP濃度(p=0.29)または血清IL-6濃度(p=0.07)は高くなかった。関節液のIL-6と血清CRP濃度(rs=0.733, p<0.001)および血清IL-6と血清CRP濃度(rs=0.729、p<0.001)には正の相関があった。

結論
:CRP濃度は化膿性関節炎の犬と変形性関節症の犬を良く識別することがわかった。 

(訳者注;CRPの濃度は日本で一般に利用されている単位(mg/dl)とは異なる点に注意。つまりここでのカットオフは日本の単位だと2.0mg/dl) 

==本文から===
  • スウェーデン農業科学大学
  • 2012-2013年
  • 組み入れ基準:身体検査で一つ以上の関節の痛み、診断もしくは治療を目的として関節穿刺、関節鏡または関節切開を実施。
  • 除外基準:妊娠、4週間以内のステロイドの投与
  • 関節駅のサンプルは痛みのある関節1-4ヶ所から無菌的に採取(治療の介入前)

疾患状態の分類基準
  • 化膿性関節炎:関節液の有核細胞数>5000/μl、好中球が30%以上、病的な出血なし
  • 正確な細胞数のカウントが不明な場合、細胞数が中程度から顕著に増加していた場合とする
  • 変形性関節症:関節液の有核細胞数≦3000/μl、好中球が10%以下、病的な出血なし
  • 正確な細胞数のカウントが不明な場合、細胞数が低いから軽度に増加していた場合とする
  • どちらにも当てはまら場合は分けて報告

結果
  •  76頭が組み入れられたが、11頭が除外(ステロイド治療(1)、参照検査の未実施(3)、どちらの疾患にも分類されず(7))
  • 化膿性関節炎31頭、変形性関節症34頭



==訳者コメント==
  • 有核細胞数が>3000、<5000、好中球の割合が>10%、<30%の症例が除外されている点に注意です。こうしたグレーゾーンを排除する方法は診断性能を高く評価してしまう傾向にあります(スペクトラムバイアス)。
  • この研究では関節の痛みのある犬を対象としていますが、関節の痛みが明瞭でなく他の症状で受診する多発性関節炎の犬も結構多い印象です。