Sabattini, S., et al.
"Prognostic significance of Kit receptor tyrosine kinase dysregulations in feline cutaneous mast cell tumors." 
Veterinary pathology 50.5 (2013): 797-805.

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==アブストラクト===
 猫皮膚肥満細胞腫(FeCMCTs)は様々な生物学的な挙動を特徴とする。多発性の結節の発現と潜在的な内臓への浸潤は、従来の予後予測の不一致とともに、良性と悪性の鑑別の不確実性を正当なものとする。c-Kitがん原遺伝子の活性化突然変異が猫の肥満細胞腫で報告されているが、予後との関連については調べられていない。この研究は、様々な臨床転帰を持つ猫皮膚肥満細胞腫の猫において、Kit細胞質免疫組織化学標識がc-Kit変異の指標とみなすことができるか、そしてKit調節不全と生存に関連があるかどうかを評価するために行った。 

 24頭の猫が原発性皮膚肥満細胞腫と診断され、登録された。Kit免疫組織化学的パターンとc-Kit(エクソン8,9,11)の変異状態が、34の腫瘍検体で評価された。生存に影響を与える危険因子は 10高倍率視野あたり5個異常の有糸分裂(p=0.017)と細胞質のKit標識であった(p=0.045)。有糸分裂活性の増加はKitの細胞質での発現と関連していた(p=0.01)。c-Kitコード変異は19(56%)の腫瘍(エクソン8,19%; エクソン9,71%, エクソン11,10%)でみられたが、それらはタンパク質発現と有意な関連はなく、予後への絵影響もなかった。さらに9頭中6頭(67%)の猫で、同一の猫からの複数の結節が異なる変異状態であった。Kitの第5免疫グロブリン様ドメインにおける変異は猫皮膚肥満細胞腫に置いて頻繁に起こるが、それらは異常なタンパク質発現と様々に関連し、生物学的挙動とは厳密には相関しないようである。
これらの知見はより大きな研究で確認する必要があり、c-Kitのゲノム領域でのさらなる探索が正当化される。 

==本文から===
  • 2005年ー2010年
  • イタリア
  • 組み入れ基準:組織学的な皮膚肥満細胞腫の診断(1つ以上の結節) 、疾患の進行と転帰の情報(最低12ヶ月の追跡期間)
  • 品種:短毛の家庭猫21頭、長毛の家庭猫1頭、シャムの雑種1頭、シャルトルー1頭
  • 年齢:平均8.4歳齢±3.31
  • 未避妊雌2頭、避妊雌11頭、去勢雄11頭
  • 皮膚の結節:1個15頭、2個5頭、6個1頭、播種性3頭
  • 播種性の症例を除いて、16の腫瘍が頭頚部、11の腫瘍が体幹部、4の腫瘍が四肢
  • 全てで手術を実施:16頭(67%)が完全切除、5頭(21%)が不完全切除、3頭が完全切除の評価なし
  • 補助治療:ステロイド6頭(25%)、ロムスチン1頭、ビンクリスチン1頭、マスチニブ1頭
  • 追跡期間:中央値740日(範囲372-1922日)
  • 12頭(50%)が病変の進行あり、他の部位での新たな結節の発生であり、局所の再発はなし、1頭で脾臓と肝臓の転移が確認
  • 無進行生存期間:上記12頭で中央値113日(範囲5-555日)
  •  13頭(54%)が研究期間終了時に生存、3頭(13%)が非腫瘍関連の原因で死亡、8頭(33%)が腫瘍関連で死亡
  • 腫瘍で死亡した8頭全てが安楽死
  • 腫瘍死した猫の生存期間の中央値は284日(範囲48-616日)