Takenaka, M., et al.
"A Double‐blind, Placebo‐controlled, Multicenter, Prospective, Randomized Study of Beraprost Sodium Treatment for Cats with Chronic Kidney Disease."
Journal of veterinary internal medicine (2017).
PubMedリンク PMID:29131397
本文:無料公開あり(PDF)
タイトル:慢性腎臓病のある猫におけるベラプロストナトリウムの治療の多施設、前向き、二重盲検プラセボ対照無作為化試験
==アブストラクト===
背景:慢性腎臓病(CKD)は猫の一般的な進行性で不可逆性の疾患である。CKDのある猫におけるベラプロストナトリウム(BPS)の効果と安全性は評価されていない。
仮説/目的:CKDの猫の治療においてベラプロストナトリウムの有効性と安全性を、プラセボと比較して評価すること
動物:自然発生性のCKDをもつ家庭飼育の猫74頭。
方法:二重盲検、プラセボ対照、多施設、前向き、無作為化試験。猫にペラムロストナトリウム(55μ/cat)またはプラセボの経口投与を12時間間隔で180日間 行なった。一次エンドポイントは血清クレアチニン、血清リン/カルシウム比、または尿比重の変化と前向きに定義した。
結果:血清クレアチニンがプラセボ群で有意(p=0.0030)に上昇したが(平均±標準偏差:2.8±0.7から3.2±1.3mg/dlへ)、ベラプロストナトリウム群ではそうでは そうではなかった(2.4±0.7から2.5±0.7mg/dlへ)。180日目における群間の差は有意であった(0.8mg/dl, 95%信頼区間:0.2-1.3mg/dl, P=0.0071)。血清リン-カルシウム比はプラセボ群で有意に上昇(0.46±0.10から0.52±0.21mg/dlへ、p=0.0037)していたが、ベラプロストナトリウム群ではそうではなかった(0,50±0.08から0.51±0.11mg/dlへ)。両群で尿比重の有意な変化はなかった。治療関連と判断される有害事象には、プラセボ群の1頭で起こった嘔吐が含まれた。CBCと他の血液化学検査において臨床的に関連のある変化は観察されなかった。
結論と臨床的重要性:ペラプロストナトリウムの治療は、CKDの猫によく許容され安全である。ベラプロストナトリウムは血清クレアチニンによって測定される腎濾過機能の低下を阻害した。
==訳者コメンント===
==本文から===
利益相反:イノウエアキオ、サカモトトシコ、クルマタニハジム、は東レ(株)の従業員である。サトウレエコ教授は東レ(株)から研究助成金を受けた。
施設:多施設研究(日本の22の動物病院)
組み入れ基準:Cre≧1.6mg/dl、尿比重<1.035、UPC<1.5、T4 0.9-3.8μg/dl
除外基準:急性腎障害、慢性心不全、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、尿路感染症、FeLV感染、感染性腹膜炎、悪性腫瘍、肝疾患、出血障害のいずれかの臨床徴候がある症例。頻繁で定期的に皮下輸液を受けている症例。
治療:ベラプロストナトリウムの錠剤を55μg/cat, 経口(食後), 12時間毎の投与
対照:プラセボ薬
一次エンドポイント:血清クレアチニン、血清リン-カルシウム比または尿比重のベースラインからの変化
二次エンドポイント:BUN、体重の変化、UPC、臨床活動スコア、飼い主によるQOLの評価、獣医師による治療の印象
180日間の投与を実施:投与開始日を第0病日
0,30,60,90,120,150,180日に臨床的および検査による評価をした
年齢
ベラプロスト群:平均14.1歳(範囲 6.7-19.3)
プラセボ群 :平均13.4歳(範囲 4.6-20)
IRISステージ
"A Double‐blind, Placebo‐controlled, Multicenter, Prospective, Randomized Study of Beraprost Sodium Treatment for Cats with Chronic Kidney Disease."
Journal of veterinary internal medicine (2017).
PubMedリンク PMID:29131397
本文:無料公開あり(PDF)
タイトル:慢性腎臓病のある猫におけるベラプロストナトリウムの治療の多施設、前向き、二重盲検プラセボ対照無作為化試験
==アブストラクト===
背景:慢性腎臓病(CKD)は猫の一般的な進行性で不可逆性の疾患である。CKDのある猫におけるベラプロストナトリウム(BPS)の効果と安全性は評価されていない。
仮説/目的:CKDの猫の治療においてベラプロストナトリウムの有効性と安全性を、プラセボと比較して評価すること
動物:自然発生性のCKDをもつ家庭飼育の猫74頭。
方法:二重盲検、プラセボ対照、多施設、前向き、無作為化試験。猫にペラムロストナトリウム(55μ/cat)またはプラセボの経口投与を12時間間隔で180日間 行なった。一次エンドポイントは血清クレアチニン、血清リン/カルシウム比、または尿比重の変化と前向きに定義した。
結果:血清クレアチニンがプラセボ群で有意(p=0.0030)に上昇したが(平均±標準偏差:2.8±0.7から3.2±1.3mg/dlへ)、ベラプロストナトリウム群ではそうでは そうではなかった(2.4±0.7から2.5±0.7mg/dlへ)。180日目における群間の差は有意であった(0.8mg/dl, 95%信頼区間:0.2-1.3mg/dl, P=0.0071)。血清リン-カルシウム比はプラセボ群で有意に上昇(0.46±0.10から0.52±0.21mg/dlへ、p=0.0037)していたが、ベラプロストナトリウム群ではそうではなかった(0,50±0.08から0.51±0.11mg/dlへ)。両群で尿比重の有意な変化はなかった。治療関連と判断される有害事象には、プラセボ群の1頭で起こった嘔吐が含まれた。CBCと他の血液化学検査において臨床的に関連のある変化は観察されなかった。
結論と臨床的重要性:ペラプロストナトリウムの治療は、CKDの猫によく許容され安全である。ベラプロストナトリウムは血清クレアチニンによって測定される腎濾過機能の低下を阻害した。
==訳者コメンント===
研究のエンドポイントが代用アウトカムである点(生存期間などの真のアウトカムではない)は注意しておくことかと思います。少なくともこの研究でCKDへの長期の影響はわかりませんし(この研究は6ヶ月の評価)、生命予後の改善効果があるかどうかもわかりません。
ベースラインでのプラセボ群でクレアチンが高めでIRISステージもやや高めなのも気になるところです。
こうした連続変数のアウトカムの評価の仕方をもう少し勉強しなければです。
<論文の吟味>
ランダム化されているか?
されている(時系列でのランダム化)
論文のPECOは?
P:臨床的に安定したCKDの猫に
一次エンドポイントは明確か?
されている されていない?
<論文の吟味>
ランダム化されているか?
されている(時系列でのランダム化)
論文のPECOは?
P:臨床的に安定したCKDの猫に
E;ベラプロストナトリウムの錠剤を55μg/cat, 経口(食後), 12時間毎の投与を行なった場合に
C:プラセボを投与した場合と比較して
O;血清クレアチニン、血清リン-カルシウム比または尿比重のベースラインからの変化に差はあるか?
C:プラセボを投与した場合と比較して
O;血清クレアチニン、血清リン-カルシウム比または尿比重のベースラインからの変化に差はあるか?
一次エンドポイントは明確か?
一次エンドポイント:血清クレアチニン、血清リン-カルシウム比または尿比重のベースラインからの変化
評価項目が複数あるため偶然の影響を受けやすい(複合アウトカムではなさそう)
評価項目が複数あるため偶然の影響を受けやすい(複合アウトカムではなさそう)
一次エンドポイントは真のアウトカムか?
代用アウトカムと考えられる(ただしCKDの進行という点では真のアウトカムに近い?)
盲検化されているか?
されいている。二重盲検
盲検化されているか?
されいている。二重盲検
ITT解析(Intention-to-treat解析)はされているか?
結果を覆すほどの脱落者はいるか?
ベラプロスト群で追跡率83%(31/37)
プラセボ群で追跡率84%(32/38) ベラプロスト群で追跡率83%(31/37)
==本文から===
利益相反:イノウエアキオ、サカモトトシコ、クルマタニハジム、は東レ(株)の従業員である。サトウレエコ教授は東レ(株)から研究助成金を受けた。
施設:多施設研究(日本の22の動物病院)
組み入れ基準:Cre≧1.6mg/dl、尿比重<1.035、UPC<1.5、T4 0.9-3.8μg/dl
除外基準:急性腎障害、慢性心不全、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、尿路感染症、FeLV感染、感染性腹膜炎、悪性腫瘍、肝疾患、出血障害のいずれかの臨床徴候がある症例。頻繁で定期的に皮下輸液を受けている症例。
治療:ベラプロストナトリウムの錠剤を55μg/cat, 経口(食後), 12時間毎の投与
対照:プラセボ薬
一次エンドポイント:血清クレアチニン、血清リン-カルシウム比または尿比重のベースラインからの変化
二次エンドポイント:BUN、体重の変化、UPC、臨床活動スコア、飼い主によるQOLの評価、獣医師による治療の印象
180日間の投与を実施:投与開始日を第0病日
0,30,60,90,120,150,180日に臨床的および検査による評価をした
年齢
ベラプロスト群:平均14.1歳(範囲 6.7-19.3)
プラセボ群 :平均13.4歳(範囲 4.6-20)
IRISステージ
ベラプロスト群:ステージ2;24/31(77%) ステージ3;7/31(23%)
プラセボ群 : ステージ2;19/32(59%)ステージ3;13/32(41%)
一次アウトカムの結果
プラセボ群 : ステージ2;19/32(59%)ステージ3;13/32(41%)
一次アウトカムの結果
・プラゼボ群ではクレアチニンの有意な上昇があった(平均±標準偏差:2.8±0.7から3.2±1.3mg/dlへ、p=0.0030)
・ベラプロスト群ではクレアチンの有意な上昇はなかった(2.4±0.7から2.5±0.7mg/dlへ、p=0.92)
・ベラプロスト群ではクレアチンの有意な上昇はなかった(2.4±0.7から2.5±0.7mg/dlへ、p=0.92)
・180日における群間のクレアチニンの差は有意だった(0.8mg/dl 95%CI 0.2-1.3、p=0.0071)
・プラセボ群ではリンーカルシウム比の有意な上昇があった(0.46±0.10から0.52±0.21mg/dlへ、p=0.0037)
・ベラプロスト群ではリンーカルシウム比の有意な上昇がなかった(0,50±0.08から0.51±0.11mg/dlへ)
・ベラプロスト群ではリンーカルシウム比の有意な上昇がなかった(0,50±0.08から0.51±0.11mg/dlへ)
・180日における群間のリンーカルシウム比の差は有意ではなかった(0.008 95%CI -0.080-0.096、p=0.85)
・尿比重は両軍ともに有意な変化はなかった(プラセボ群 1.017±0.007から1.015±0.008、ベラプロスト群1.016±0.006から1.017±0.008へ)
有害事象
・尿比重は両軍ともに有意な変化はなかった(プラセボ群 1.017±0.007から1.015±0.008、ベラプロスト群1.016±0.006から1.017±0.008へ)
有害事象
・ベラプロスト群:16症例(32イベント)
・プラセボ群 :22症例(61イベント)
・プラセボ群 :22症例(61イベント)
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