ねころんで探せる小動物医療のジャーナルクラブ

小動物臨床の獣医師が、臨床に役立ちそうな論文情報をちょっとづつアップします。ねころんでいても論文検索ができればいいなと。

カテゴリ: 治療

Hamon, Martin, et al.
"Long‐term outcome of the transobturator vaginal tape inside out for the treatment of urethral sphincter mechanism incompetence in female dogs." 
Veterinary Surgery48.1 (2019): 29-34.

PubMedリンク PMID:30376185
本文:無料公開あり(全文

タイトル
:雌犬の尿道括約筋機構不全の治療としての内側-外側の経閉鎖筋膣テープの長期転帰

==アブストラクト=== 
目的
:尿道括約筋機構不全のある雌犬における内側-外側の経閉鎖筋膣テープの長期的な効果を評価すること。

研究デザイン:回顧的研究。

動物:尿失禁のある避妊済みの雌犬(n=12)

方法
: 尿道括約筋機構不全と診断された尿失禁のある雌犬12頭に内側-外側経閉鎖筋膣テープを挿入した。追跡情報は電話でのアンケートにより評価し、随意調節スコアに寄与させた。

結果:手術から1年後、12頭中7頭(58%)が完全に随意調節できていた。 2頭は長期解析からは除外された(1頭は死亡、1頭は追跡不能)。中央追跡期間の85ヶ月(範囲28-95)の時点で、10頭中4頭が、内科治療無しに完全な随意調節ができていた。6頭で、中央値で術後2ヶ月(範囲 1-20ヶ月)で、尿失禁が再発した。これらの6頭のうち、4頭は再び随意調節をとりもどし、2頭は散発的な尿失禁があり追加の治療を行なった。術後の合併症は発生しなかった。

結論
: 内側-外側経閉鎖筋膣テープは40%に犬で長期的な随意調節の管理に成功した。他の40%の犬では、随意調節を取り戻すための術後の追加の内科治療が有効であった。

臨床的意義
内側-外側経閉鎖筋膣テープは、尿道括約筋機構不全の代替的な治療を提供し、それは標準的な外科手技よりも安全で侵襲性が低かった 。
 

Bray, J. P., et al.
"Does thalidomide prolong survival in dogs with splenic haemangiosarcoma?." 
Journal of Small Animal Practice59.2 (2018): 85-91.

PubMedリンク PMID:29210452
本文:無料公開なし

タイトル
:脾臓の血管肉腫の犬においてサリドマイドは生存を延長するか?
 
==アブストラクト===
 
目的:犬の血管肉腫の補助療法としてのサリドマイドを調べること。

方法
:最初に脾臓摘出術で治療した脾臓血管肉腫の犬15頭を組み入れた。手術からの回復に引き続き、すべての犬にサリドマイドの投与をするまで続けた。腫瘍のステージは、サリドマイド治療を開始する直前に胸部および腹部のCTスキャンを用いて行い、3ヶ月後にも再び行なった。死因は死後検査によって確認した。

結果:サリドマイドの投与をうけた犬の中央生存期間は172日(95%信頼区間:93-250日)であった。5頭(33%)は術後1年以上生存(範囲:458-660日)した。ステージ2でサリドマイドの投与を受けた犬は、ステージ3の犬に比べて生存期間が長かった(中央生存期間 303日vs.40日)。15頭中、13頭が血管肉腫の転移によって死亡した。

臨床的重要性
:サリドマイドによる治療はは、脾臓血管肉腫の犬の生存を改善する可能性があり、可能な補助療法として考慮すべきである。 


==訳者コメント=== 
たしかに脾臓血管肉腫の術後の一般的な自然予後よりは、長めの生存期間になっている感じがあります。
ただし、対照群もなくn数も多くないため、効果ありと判断できるほどの結果ではないかもしれません。手術した全ての犬に投与ができたわけでもないと思いますし、腫瘍のステージの偏りもあるかもしれません。
 

Fournier, Q., et al.
"Impact of Pretreatment Neutrophil Count on Chemotherapy Administration and Toxicity in Dogs with Lymphoma Treated with CHOP Chemotherapy." 
Journal of veterinary internal medicine 32.1 (2018): 384-393.

PubMedリンク PMID:29194765
本文:無料公開あり(全文

タイトル:プレドニゾロンとトセラニブまたはビンブラスチンで治療した肥満細胞腫の犬における反応予測因子としてのc-Kit突然変異と局在状態

==アブストラクト===
背景:トセラニブなどのKIT阻害剤とビンブラスチンは肉眼病変の肥満細胞腫において前向きに比較されていない。また、c-Kit突然変異のない肥満細胞腫の治療としてビンブラスチンまたはトセラニブのどちらが優れているかも不明である。

仮説/目的:肉眼病変の肥満細胞腫の犬の治療決定におけるKITの遺伝子型と局在の有用性を調べること。われわれはc-kit遺伝子変異のある肥満細胞腫ではビンブラスチンよりもトセラニブの反応性が良いだろうと仮定した。

動物:肉眼病変の肥満細胞腫のある家庭飼育犬88頭。

方法:前向き、ランダム化試験。犬は、KITの局在とc-kit突然変異によって適応的ランダム化計画により、トセラニブ(2.75mg/kg EOD)またはビンブラスチン(2.5mg/m2 週1回の4回投与ののちに隔週投)の いずれかにランダム化された。

結果:60頭がトセラニブに、28頭がビンブラスチンに割り付けられた。 トセラニブの投与を受けた犬の20%にc-kit突然変異があり、VBLの投与をうけた犬の30%に突然変異があった(P=0.74)。全体の反応率はトセラニブ46%、ビンブラスチン30%であった(オッズ比=1.56[0.62-3.92];P=0.28)。無進行生存期間の中央値は、ビンブラスチンの投与を受けた犬で78日(7-1,521)、トセラニブの投与の犬で95.5日(12-990)であり、ハザード比は1.34([0.72-2.50],P=0.36)であった。全体の中央生存期間はビンブラスチングループで241.5日(10-1,541)、トセラニブグループで159日であり、ハザード比は0.80([0.45-1.41];P=0.44)であった。

結論と臨床的重要性
:無進行生存期間も全体の生存期間もいずれも、グループ間で有意な差はなかった。この研究の集団の犬においては治療グループ間でのc-kit突然変異のある犬の割合に差はなく、c-kit突然変異の状態は治療反応を予測しなかった。


==本文から===
利益相反の開示:この研究のパラディアはゾエティスが提供している。Thamm、Clifford、Vail、Londonはいずれもゾエティスの有給のコンサルタントである。Londonは教育素材の開発に対する報酬と講演の謝礼を受けている。Cliffordはゾエティスの諮問委員会のメンバーである。 


==訳者コメント===
ランダム化比較試験でありながら、少し複雑な研究の印象です。
本文読んで論文の吟味をしようとしたのですが、断念してしまいました。 
 

Takenaka, M., et al.
"A Double‐blind, Placebo‐controlled, Multicenter, Prospective, Randomized Study of Beraprost Sodium Treatment for Cats with Chronic Kidney Disease." 
Journal of veterinary internal medicine (2017).

PubMedリンク PMID:29131397
本文:無料公開あり(PDF

タイトル:慢性腎臓病のある猫におけるベラプロストナトリウムの治療の多施設、前向き、二重盲検プラセボ対照無作為化試験 

==アブストラクト===
 背景:慢性腎臓病(CKD)は猫の一般的な進行性で不可逆性の疾患である。CKDのある猫におけるベラプロストナトリウム(BPS)の効果と安全性は評価されていない。

仮説/目的:CKDの猫の治療においてベラプロストナトリウムの有効性と安全性を、プラセボと比較して評価すること

動物:自然発生性のCKDをもつ家庭飼育の猫74頭。

方法:二重盲検、プラセボ対照、多施設、前向き、無作為化試験。猫にペラムロストナトリウム(55μ/cat)またはプラセボの経口投与を12時間間隔で180日間 行なった。一次エンドポイントは血清クレアチニン、血清リン/カルシウム比、または尿比重の変化と前向きに定義した。

結果:血清クレアチニンがプラセボ群で有意(p=0.0030)に上昇したが(平均±標準偏差:2.8±0.7から3.2±1.3mg/dlへ)、ベラプロストナトリウム群ではそうでは そうではなかった(2.4±0.7から2.5±0.7mg/dlへ)。180日目における群間の差は有意であった(0.8mg/dl, 95%信頼区間:0.2-1.3mg/dl, P=0.0071)。血清リン-カルシウム比はプラセボ群で有意に上昇(0.46±0.10から0.52±0.21mg/dlへ、p=0.0037)していたが、ベラプロストナトリウム群ではそうではなかった(0,50±0.08から0.51±0.11mg/dlへ)。両群で尿比重の有意な変化はなかった。治療関連と判断される有害事象には、プラセボ群の1頭で起こった嘔吐が含まれた。CBCと他の血液化学検査において臨床的に関連のある変化は観察されなかった。

結論と臨床的重要性
:ペラプロストナトリウムの治療は、CKDの猫によく許容され安全である。ベラプロストナトリウムは血清クレアチニンによって測定される腎濾過機能の低下を阻害した。


==訳者コメンント===
研究のエンドポイントが代用アウトカムである点(生存期間などの真のアウトカムではない)は注意しておくことかと思います。少なくともこの研究でCKDへの長期の影響はわかりませんし(この研究は6ヶ月の評価)、生命予後の改善効果があるかどうかもわかりません。 
 
 ベースラインでのプラセボ群でクレアチンが高めでIRISステージもやや高めなのも気になるところです。
こうした連続変数のアウトカムの評価の仕方をもう少し勉強しなければです。
 

<論文の吟味>
ランダム化されているか

 されている(時系列でのランダム化)

論文のPECOは

P:
臨床的に安定したCKDの猫に
E;ベラプロストナトリウムの錠剤を55μg/cat, 経口(食後), 12時間毎の投与を行なった場合に
C:プラセボを投与した場合と比較して
O;
血清クレアチニン、血清リン-カルシウム比または尿比重のベースラインからの変化に差はあるか?
 
一次エンドポイントは明確か?
一次エンドポイント:血清クレアチニン、血清リン-カルシウム比または尿比重のベースラインからの変化
評価項目が複数あるため偶然の影響を受けやすい(複合アウトカムではなさそう)

一次エンドポイントは真のアウトカムか?
代用アウトカムと考えられる(ただしCKDの進行という点では真のアウトカムに近い?)

盲検化されているか?
されいている。二重盲検

ITT解析(Intention-to-treat解析)はされているか?
されている されていない?

結果を覆すほどの脱落者はいるか?
ベラプロスト群で追跡率83%(31/37)
プラセボ群で追跡率84%(32/38) 

==本文から===
利益相反:イノウエアキオ、サカモトトシコ、クルマタニハジム、は東レ(株)の従業員である。サトウレエコ教授は東レ(株)から研究助成金を受けた。

施設:多施設研究(日本の22の動物病院)

組み入れ基準:Cre≧1.6mg/dl、尿比重<1.035、UPC<1.5、T4 0.9-3.8μg/dl
除外基準:急性腎障害、慢性心不全、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、尿路感染症、FeLV感染、感染性腹膜炎、悪性腫瘍、肝疾患、出血障害のいずれかの臨床徴候がある症例。頻繁で定期的に皮下輸液を受けている症例。

治療:
ベラプロストナトリウムの錠剤を55μg/cat, 経口(食後), 12時間毎の投与
対照:プラセボ薬

一次エンドポイント:
血清クレアチニン、血清リン-カルシウム比または尿比重のベースラインからの変化
二次エンドポイント:BUN、体重の変化、UPC、臨床活動スコア、飼い主によるQOLの評価、獣医師による治療の印象

180日間の投与を実施:投与開始日を第0病日
0,30,60,90,120,150,180日に臨床的および検査による評価をした

年齢
ベラプロスト群:平均14.1歳(範囲 6.7-19.3)
プラセボ群  :平均13.4歳(範囲 4.6-20)

IRISステージ
ベラプロスト群:ステージ2;24/31(77%) ステージ3;7/31(23%)
プラセボ群  : ステージ2;19/32(59%)ステージ3;13/32(41%)

一次アウトカムの結果
・プラゼボ群ではクレアチニンの有意な上昇があった(平均±標準偏差:2.8±0.7から3.2±1.3mg/dlへ、p=0.0030)
・ベラプロスト群ではクレアチンの有意な上昇はなかった(2.4±0.7から2.5±0.7mg/dlへ、p=0.92)
・180日における群間のクレアチニンの差は有意だった(0.8mg/dl 95%CI 0.2-1.3、p=0.0071)
・プラセボ群ではリンーカルシウム比の有意な上昇があった(0.46±0.10から0.52±0.21mg/dlへ、p=0.0037)
・ベラプロスト群ではリンーカルシウム比の有意な上昇がなかった(0,50±0.08から0.51±0.11mg/dlへ)
・180日における群間のリンーカルシウム比の差は有意ではなかった(0.008 95%CI -0.080-0.096、p=0.85)
・尿比重は両軍ともに有意な変化はなかった(プラセボ群 1.017±0.007から1.015±0.008、ベラプロスト群1.016±0.006から1.017±0.008へ) 

有害事象
・ベラプロスト群:16症例(32イベント)
・プラセボ群  :22症例(61イベント) 

 

Jaffey, J. A., et al.
"Desoxycorticosterone Pivalate Duration of Action and Individualized Dosing Intervals in Dogs with Primary Hypoadrenocorticism."
Journal of Veterinary Internal Medicine (2017).

PubMedリンク
本文:無料公開(PDF

タイトル: 犬の原発性副腎皮質機能亢進症におけるデオキシコルチコステロンピバレートの作用時間と個別の投与間隔

==アブストラクト===
背景:臨床医は費用を軽減するためにピバル酸デオキシコルチコステロン(DOCP)の投与を変更するが、この行為は前向き臨床試験で吟味評価されていない。

仮説/目的:犬の原発性副腎皮質機能低下症におけるDOCPの作用持続時間は30日より長い。

動物: 原発性副腎皮質機能低下症の家庭犬53頭。新たに副腎機能低下症と診断された犬24頭(グループ1)と治療中の副腎皮質機能低下症の犬29頭(グループ2)。

方法 :前向き、多施設、臨床試験。第Ⅰ相試験、DOCPを投与し計画的な評価で低ナトリウムもしくは高カリウムが見られるまで、もしくは計画的な評価以外で臨床徴候の発現と血漿電解質が基準値範囲外となるまで、血漿ナトリウムとカリウム濃度の測定を行い、それによってDOCPの作用時間を決定した。次いで、血漿電解質濃度は個別投与間隔(例えば、DOCPの作用時間ー7日(第Ⅱ相)と、第Ⅱ相終了後少なくとも3ヶ月(第Ⅲ相)) の終わりに評価された。

結果:新たに副腎皮質機能低下症と診断された犬(n=24)の第一相試験ではDOCPの作用時間は32日〜94日(中央値 62日;95%信頼区間 57-65)であり、すでに治療を受けている副腎皮質機能低下症の犬(n=29)では41〜124日(中央値 67日;95%信頼区間56-72日)であった。全体的に、第Ⅱ相を完了した犬(n=36)での最終的なDOCPの投与間隔は38〜90日(中央値 58日;95%信頼区間53-61日)であった。第3相を完了した犬(n=15)で個別投与間隔の短縮を必要とする犬はいなかった。DOCPの作用時間は、グループとは無関係に、ベースラインの各変数と有意に相関していなかった。個別投与間隔を用いた場合の費用削減の中央値は、年に57.5%であった。

結論と臨床的重要性:原発性副腎皮質機能低下症の犬におけるDOCPの作用時間は30日以上であり、個別投与間隔を用いて血漿ナトリウムとカリウム濃度を30日以上の長い期間維持することができる。


==アブストラクト===
利益相反の開示:著者の利益相反無し


==訳者コメント===
補足)DOCPは持続型のミネラルコルチコイド製剤でアジソン病の治療に利用されますが、国内での販売はありません。(商品名:パーコーテン)
 

Grobman, M., and C. Reinero.
"Investigation of Neurokinin‐1 Receptor Antagonism as a Novel Treatment for Chronic Bronchitis in Dogs." 
Journal of veterinary internal medicine 30.3 (2016): 847-852.

PubMedリンク
本文:無料公開(PDF

タイトル:犬の慢性気管支炎に対する新規治療薬としてのニューロキニン-1受容体拮抗作用の検討

==アブストラクト===
背景:犬の慢性気管支炎は、2ヶ月以上続く咳と気道の炎症をもたらす。副作用には生涯にわたるコルチコステロイドの投与に伴う二次感染のリスクが含まれ、代替療法への調査が促される。ニューロキニン(NK)1受容体に結合するタキキニンによって媒介される神経原生の経路は、咳と気道の炎症を誘発する可能性がある。マロピタントはNK-1受容体拮抗薬であり、経験的な改善に基づいて犬の慢性気管支炎の治療に提唱されているが、科学的な根拠はない。

仮説/目的:マロピタントは犬の慢性気管支炎に関連する臨床徴候と気道の炎症を鈍させる。

動物:2ヶ月以上の咳があり、胸部レントゲンによる気道疾患と気管支肺胞洗浄(BAL)における無菌性の気道炎症(>7%の非変性好中球、>7%の好酸球、もしくはその療法)の証拠がある家庭犬(n=8)が登録された。

方法:マロピタント(2mg/kg)が48時間毎に14日間投与された。研究のエンドポイントは臨床徴候(ベースラインと14日での調査と、ベースラインと7日と14日での視覚アナログスケール)と、BALの好中球と好酸球の%(ベースラインと14日)の飼い主の認識を含めた。一方向反復測定ANOVA(視覚アナログスケール)とウィルコクスン符号付きランクサム検定(BAl細胞、咳の頻度)がP<0.05で有意差ありとして用いられた。

結果
:マロピタントは咳の頻度(P<0.001)と視覚アナログスケールのスコア(P=0.005)を有意に減少させた。BALの好中球%または好酸球%は治療によって差は認められなかった(それぞれP=0.279、P=0.382)。

結論と臨床的重要性
:予備的結果によって、マロピタントは鎮咳特性を持ち臨床的な改善をもたらすかもしれないが、気道の炎症を消失させることはできず犬の慢性気管支炎の治療には適さないことが示唆された。さらなる研究によって、犬のその他の呼吸器疾患における咳の抑制剤としてマロピタントの評価をすることができる。
 

==本文から===
利益相反の開示:著者の利益相反なし
 

Marvel, S. J., et al.
"Clinical outcome of partial cystectomy for transitional cell carcinoma of the canine bladder."
 
Veterinary and Comparative Oncology (2017).

PubMedリンク
本文:無料公開なし

タイトル
:犬の膀胱移行上皮癌に対する膀胱部分摘出術の臨床転帰

==アブストラクト===
犬の膀胱の移行上皮癌(TCC)はこれまで歴史的に、化学療法、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、放射線治療の組み合わせで治療されてきた。手術は膀胱の移行上皮癌の治療に用いられてきたが、その有効性はまだ確立されていない。

膀胱の移行上皮癌の治療として膀胱部分摘出術±様々な非外科的治療を行なった37頭の家庭犬を回顧的に再評価した。全体の中央無増悪期間(PFI)は235日で、中央生存期間(ST)は348日であった。単変量解析により特定された生存期間に対する有意な予後因子は年齢、腫瘍の位置、全層切除、ピロキシカムの投与頻度であった。無増悪期間に対する有意な予後因子は全層切除とピロキシカムの投与頻度 であった。膀胱部分摘出と毎日のピロキシカム投与±化学療法の中央生存期間は772日であった。

膀胱三角ではない移行上皮癌の犬で、全層性の膀胱部分摘出と毎日のピロキシカムの投与(±化学療法)を受けた場合に、内科治療を受けない場合に比べて転帰が改善する可能性がある。

 
==本文から==
利益相反・企業関与:不明(記載なし)


==訳者コメント===
ピロキシカムの投与がSIDとEODで生存期間に随分と差が出ているのが興味深いです(SID 772日 vs EOD 253.5日 ※本文から)。単変量解析の結果ですし、そもそも
この研究だけで差を正確に評価することはできませんが、特に問題がなければむやみに投与間隔は空けない方がいいのかもしれません。
 

Sent, U., et al.
"Comparison of Efficacy of Long‐term Oral Treatment with Telmisartan and Benazepril in Cats with Chronic Kidney Disease." 
Journal of veterinary internal medicine 29.6 (2015): 1479-1487.

PubMedリンク
本文:無料公開(PDF

タイトル:慢性腎臓病の猫におけるテルミサルタンとベナゼプリルの長期経口投与の有効性の比較

==アブストラクト===
背景:慢性腎臓病( CKD)の猫におけるテルミサルタンの有効性や利益についてはこれまで報告されていない。

仮説:テルミサルタンを用いたCKDの猫の長期治療は、ベナゼプリルと同様に尿タンパククレアチニン比(UPC)が減少する。

動物:CKDの家庭飼育の成猫224頭

方法:非劣性デザインによる前向き、他施設、対照、ランダム化、並行群、盲検臨床試験。猫はテルミサルタン(1mg/kg n=112)もしくはベナゼプリル(0.5-1.0mg/kg n=112)24時間毎投与のいずれかに、1:1の比で割り付けられた。信頼区間アプローチに基づいて比較した割合のベースライン(AUC 0→t/t)からのUPCの変化の対数変換加重平均をもとにした尿タンパクの変化(ベナゼプリル:テルミサルタン)を主要エンドポイントと定義した。 ベースラインからのUPCの変化はすべての研究日に評価し、複数の比較によって補正した。

結果:尿タンパクの制御において、テルミサルタンはベナゼプリルに対して非劣性であることが証明された(信頼区間 -0.035から0.268)。180日におけるベースラインと比較したUPCはテルミサルタンのグループで有意に低く(-0.05±0.31; p=0.016)、一方でベナゼプリルのグループでは変化は統計学的に有意ではなかった(-0.02±0.48; p=0.136)。同様の結果が、つまりテルミサルタンではUPCの有意な減少がありベナゼプリルではみられないという結果がすべての評価ポイントで得られた。

結論と臨床的重要性:テルミサルタンとベナゼプリルはともによく許容され安全であった。ベナゼプリルと比較してテルミサルタンは非劣性であることが示され、ベースラインからのUPCの相対的に有意な減少はすべての評価ポイントでテルミサルタンでみられたが、ベナゼプリルではみられなかった。


==本文から===
利益相反宣言
:このプロジェクトはBoehringer Ingelheim Vetmedica GmbHが資金提供しており、代表者が最終原稿を読み承認している。筆頭著者のUlrike SentもBoehringer Ingelheim Vetmedica GmbHの従業員。

組み入れ基準
・2.0kg以上
・臨床的に安定しているIRISステージ2-3のCKDの猫
・病歴、身体所見、臨床検査によってCKDと診断
・血清クレアチニン 1.6mg/dl以上、5.0mg/dl以下
・尿比重 <1.035
・UPC 0.2以上、2.0未満
・血清T4 3.1μg/dl以下
・収縮期血圧 170mmHg以下

除外基準
・検査から14日以内にACEI、ARB、その他の血管拡張薬、または利尿薬の投与を受けている
・検査から14日以内に食事の変更をしている
・尿路感染がある
・腎臓が腫大している
・腎臓腫瘍がある
・腎前性または腎後性の腎不全
・心不全がある
・急性腎障害
・妊娠中、授乳中


==訳者コメント===
 ・統計的に有意な差が臨床的に意味のある差とは限らない点に注意して結果をみる必要があります。

・この研究の主要エンドポイントがUPCの変化です。これは代用アウトカムであり、真のアウトカムを反映しているとは限りません。つまり、CKDの治療において真のアウトカムは死亡、CKDの進行などであると思いますが、UPCを減少させることが、死亡やCKDの進行を減少させるとは限らないということです。

↓文献の吟味もやってみました。(慣れてないのであまりうまくできてないかもですが)

==文献の吟味===
AHEADMAPの論文を10分で読むためのワークシート(ランダム化比較試験)を参照して実施

ランダム化されているか? 
→されている(ランダム化の方法は不明)

論文のPECOは?
 P:CKD(IRIS stage2-3)の猫に
 E:テルミサルタン(1mg/kg po q24h)の投与を行うと
 C:ベナゼプリル(0.5-1.0mg/kg po q24hr)の投与を行なった場合と比べて
  (テルミサルタンとベナゼプリルの順序は任意)
 O:尿タンパクは減少するか?(UPCがベースラインから減少するか?)

一次アウトカムは明確か?
→明確(UPCのベースラインからの減少)

真のアウトカムか? 
→否。UPCの減少は代用アウトカムと判断される。

盲検化されているか?
→評価者のみが盲検化されている様子。PROBE法と判断。

ITT解析か?
→一次アウトカムの評価はITT解析ではない(安全性はITT解析で評価)

結果を覆すほど脱落者はいるか?
→ 追跡率:テルミサルタンで76%、ベナゼプリルで81%
 

Lamoureux, A., C. Maurey, and V. Freiche.
"Treatment of inflammatory rectal strictures by digital bougienage: a retrospective study of nine cases." 
Journal of Small Animal Practice 58.5 (2017): 293-297.

PubMedリンク
本文:無料公開なし

タイトル
:犬の滑脱型裂孔ヘルニアと胃食道逆流の外科的管理の前向き評価

==アブストラクト===
目的:標準化臨床スコアリング、ビデオ透視嚥下評価、インピーダンス測定を用いて犬の滑脱型裂孔ヘルニア(SHH)と胃食道逆流(GER)の外科的治療の反応性を評価すること。

研究デザイン:前向き臨床試験

動物
:17頭の家庭犬

方法
:滑脱型裂孔ヘルニアおよび/または胃食道逆流の臨床症状とビデオ透視の証拠がある犬が組み込まれた。飼い主には、術前および術後に犬嚥下障害評価ツール(CDAT)を完了するように求めた。術前と術後の一部の犬で、食道機能と下部食道括約筋の位置および配置を評価するために、覚醒下でのビデオ透視嚥下評価とインピーダンス測定を行なった。

結果:術前に、研究に組み込まれた犬17頭中13頭で術前に逆流の病歴があり、17頭中4頭でレントゲンで吸引性肺炎の証拠があった。術前の逆流のある犬10頭中8頭で食後の逆流が改善し、術前と術後の犬嚥下評価ツールのアンケートが利用可能であった(p<0.01)。術前、術後のビデオ透視嚥下評価を行なった犬(n=12)で、裂孔ヘルニアの重症度スコアが術後に改善した(p=0.046)。しかし、ヘルニアの頻度スコア(p=0.2)とインピーダンス測定の変数は時点間で有意な差はなかった。

結論
:滑脱型裂孔ヘルニアの臨床徴候は一般に手術で改善したが、一貫して改善したわけではなかった。ビデオ透視は、術後に胃食道逆流と滑脱型裂孔ヘルニアが持続している患者がいることの証拠を示した。インピーダンス測定の所見に基づけば、臨床的な改善は下部食道括約筋の減弱とは独立したメカニズムによる可能性がある。

 

Lamoureux, A., C. Maurey, and V. Freiche.
"Treatment of inflammatory rectal strictures by digital bougienage: a retrospective study of nine cases." 
Journal of Small Animal Practice 58.5 (2017): 293-297.

PubMedリンク
本文:無料公開なし 

タイトル:指のブジー挿入術による炎症性の直腸狭窄の治療:9頭の回顧的研究

==アブストラクト===
目的:犬と猫の炎症性直腸狭窄は滅多に報告されていない。本研究の目的は、指ブジー挿入術の治療を行なった9症例について述べることである。

方法:便秘、排便障害、しぶりで来院し、炎症性の直腸狭窄と診断された猫と犬の医療記録を、2007年から2014年の2つの二次病院のデータベースから収集した。

結果:4頭の犬と5頭の猫が組み入れ基準を満たした。猫5頭中4頭が純血種の子猫だった。3頭の猫と2頭の犬は下痢の病歴があり、2頭の犬は骨の摂取歴があった。全ての症例で手指の直腸検査で直腸狭窄が明らかとなった。病理組織学的にリンパ球形質細胞の浸潤が、4頭全ての犬と2頭の猫で明らかとなった。全ての症例は指ブジー挿入術で治療された。サイリウムが豊富な食事を全ての犬と猫に処方した。追跡情報が入手可能であった症例8頭全てで臨床徴候が完全に解決したと報告された。

臨床的重要性
:便秘、しぶり、排便障害、特に急性もしくは慢性の下痢の病歴がある場合の鑑別診断には、消化管の炎症に関連する良性の直腸狭窄は鑑別診断に含めるべきである。ここで紹介した治療はシンプルであり、最小限の侵襲で長期に効果的である。
 

Webb, Craig B., Kelly W. McCord, and David C. Twedt.
"Rectal strictures in 19 dogs: 1997–2005." 
Journal of the American Animal Hospital Association 43.6 (2007): 332-336.

PubMedリンク
本文:無料公開なし

タイトル
:直腸狭窄の犬19頭;1997-2005年

==アブストラクト===
犬の非腫瘍性の直腸狭窄の病因には、異物、術後の形成、炎症性疾患、先天性奇形が含まれる。19頭中16頭でバルーン拡張術が行われ、16頭中14頭でトリアムシノロンの病巣内注射が行われた。拡張後、1頭では臨床徴候が持続し、5頭では内科治療を継続しながら改善し、9頭では拡張後の追跡期間中(平均18ヶ月;中央値12ヶ月)は徴候が解消し、1頭は追跡から脱落した。バルーン拡張術とトリアムシノロンは、非腫瘍性の直腸狭窄と診断された犬で多くで臨床徴候を改善する治療計画の一部となる。

 

Robat, Cecilia S., et al.
"Clinical features, treatment options, and outcome in dogs with thymoma: 116 cases (1999–2010)." 
Journal of the American Veterinary Medical Association 243.10 (2013): 1448-1454.

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本文:google scholarからresearchgateで入手可能(PDF

タイトル:胸腺腫の犬の臨床的特徴、治療オプション、および転帰:116症例(1999-2010年)

==アブストラクト===
目的:胸腺腫の犬の臨床徴候、診断所見、治療、転帰を記載し、生存期間と関連する因子を決定すること。

デザイン:多施設回顧的症例シリーズ。

動物:胸腺腫の犬116頭

手順:シグナルメント、身体検査所見、検査結果、画像診断、内科的および外科的治療、生存期間について医療記録を検索した。

結果:胸腺腫の116頭の犬のうち、44頭(38%)がラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーであった。116頭中20頭(17%)に重症筋無力症の徴候があった(13頭で診断が確定)。胸腺腫の診断時に、40頭(34%)で高カルシウム血症があり、8頭(7%)で免疫介在性疾患の併発があり、31頭(27%)で他の腫瘍がみられ、16頭(14%)は後日に胸腺腫ではない2個目の腫瘍が発生した。腫瘍の切除は84頭で行われ、14頭(17%)で再発がみられた。2回目の手術を行った犬は予後が良好だった。生存期間の中央値は手術をした場合に635日、手術をしなかった場合に76日であった。胸腺腫の診断時の他の腫瘍の併発、外科的な腫瘍の切除をしなかった場合、病理学的な高いステージは、生存期間の短縮と有意に関連していた。高カルシウム血症、胸腺腫診断時の重症筋無力症もしくは巨大食道症の存在、病理組織学的な胸腺腫のサブタイプ、後日の腫瘍の発生は生存期間には関連しなかった。

結論と臨床的関連
:胸腺腫の犬では、大きな腫瘍による負荷があったり、腫瘍随伴症候群があったとしても、手術によって良好な予後が得られる。外科的治療、腫瘍のステージ、診断時の他の腫瘍の併発が生存期間に影響した。 

Burton, A. G., C. T. Talbot, and M. S. Kent.
"Risk Factors for Death in Dogs Treated for Esophageal Foreign Body Obstruction: A Retrospective Cohort Study of 222 Cases (1998–2017)."
 
Journal of Veterinary Internal Medicine (2017).

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本文:無料公開あり(PDF

タイトル
:食道異物閉塞を治療した犬における死亡の危険因子:222症例の回顧的コホート研究

==アブストラクト===
背景
:食道異物閉塞の犬における死亡の危険因子と長期予後について記述したデータは限られている。

仮説/目的
:食道異物閉塞の犬における短期及び長期の転帰を評価し、死亡の危険因子を解析すること。我々は閉塞時間と治療のタイプが転帰に影響を与えるだろうという仮説をもった。

動物
:1998年3月から2017頭3月までの間に二次救急病院で、222頭の食道異物閉塞の犬が治療を受けた。

方法
:食道異物閉塞の犬の医療記録を回顧的に再調査した。

結果
:異物は骨が最も多く(180/222[81%])、食道遠位が最も多い閉塞部位だった(110/222[49.5%])。臨床徴候の期間は死亡リスクと関連しなかった(OR=1.08, 95%信頼区間 0.99-1.17; p=0.2)。閉塞は内視鏡で治療され(204/22291.8%])、内視鏡の試みの後に手術が行われた(13/222[5.9%])、手術後の内視鏡の再実施を提案したが拒否された(5/222[2.3%])。病院内での死亡率は11/222(5%)であった。死亡のリスクは手術の場合で有意に高く(OR=20.1, 95%信頼区間3.59-112.44; p=0.001)、手術後の内視鏡の再実施を拒否された場合には5/5(100%)の犬が死亡した。処置後の合併症の増加(OR=3.44, 95%信頼区間2.01-5.91; p<0.001)、食道の穿孔(OR=65.47, 95%信頼区間4.27-1004.15; p=0.003)、食道出血(OR=11.81, 95%信頼区間1.19-116.77; p=0.04)は入院中のリスクを増加させた。追跡可能な生存患者の4/189(2.1%)で食道狭窄が報告された。

結論と臨床的重要性
:犬の食道異物では死亡は一般的ではない。しかし治療のタイプは転帰に影響し、これらのデータは犬の食道異物の意思決定の補助として利用されるべきだ。

 

Rassnick, Kenneth M., et al.
"Lomustine for treatment of mast cell tumors in cats: 38 cases (1999–2005)." 
Journal of the American Veterinary Medical Association 232.8 (2008): 1200-1205.

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本文:無料公開なし

==アブストラクト===
目的
:肥満細胞腫の猫の治療にロムスチンを用いた時の臨床活性と毒性について決定すること。

デザイン
:回顧的症例シリーズ

動物
:測定可能で組織学的もしくは細胞学的に肥満細胞腫と確定されており、50mg/m2以上の用量でロムスチンの投与を受けている38頭の猫。

手順
:医療記録を再調査し、治療への反応と薬剤の毒性の証拠を決定した。寛解期間の見積もりにはカプランメイヤー法を用いた。

結果
:26頭が皮膚の肥満細胞腫、7頭が腸間膜リンパ節の肥満細胞腫、2頭が腸管の肥満細胞腫、2頭が肝臓の肥満細胞腫、1頭は多臓器に浸潤した肥満細胞腫であった。ロムスチンの目標用量は22頭の猫で50mg/m2、16頭の猫で60mg/m2であった。ロムスチンの投与量の中央値は56mg/m2(範囲 48 - 65mg/m2)であり、投与回数の中央値は2回(範囲 1 - 12回)であった。7頭の猫は完全寛解となり、12頭は部分寛解となり、全体の反応率は50%であった。反応期間の中央値は168日(範囲 25 - 727日)であった。もっとも多い毒性は好中球減少症と血小板減少症であった。

結論と臨床的関連性
:この結果は猫の肥満細胞腫に活性があり、よく許容されることを示唆している。さらに、これらの知見は猫の肥満細胞腫で局所治療が適応とならない際にロムスチンの治療を考慮すべきであるということを示唆している。

Berger, Erika P., et al.
"Retrospective evaluation of toceranib phosphate (Palladia) use in cats with mast cell neoplasia." 
Journal of Feline Medicine and Surgery (2017): 1098612X17695898.

リンク
本文:無料公開なし

==アブストラクト===
目的
:この研究の目的は臨床獣医の専門家から、肥満細胞腫瘍の猫におけるトセラニブの使用に関するデータを集めて蓄積し、可能性のある臨床的な有用性と有害事象についての初期評価を提供することである。

方法
:米国獣医内科学および腫瘍学のリストサーブ(注:≒メーリングリスト)が、猫肥満細胞腫の治療にトセラニブが使用された症例に関するデータを収集するのに利用された。症例は以下のデータを入手できた場合に君入れられた:シグナルメント(年齢、性別、品種)、細胞診もしくは病理組織学的な肥満細胞腫の診断、疾患の解剖学的分類(皮膚、脾臓/肝臓、消化管、その他)、過去および並行して行われた治療、トセラニブの用量(mg/kg)と投与スケジュール、治療期間、最も良い反応、有害事象。
 
結果
:50頭の猫から得られた症例のデータは、皮膚(n=22)、脾臓/肝臓(n=10)、消化管(n=17)、その他(n=1)であった。臨床的有用性は80%(40/50)でみられ、皮膚の86%(19/22)、脾臓/肝臓の80%(8/10)、消化管の76%(13/17)であった。大部分の猫(n=35)がトセラニブの治療期間にグルココルチコイドの投与も受けていた。臨床的利益を経験した猫の治療期間の中央値は36週間(範囲 4-106週間)であり、皮膚で48週間(範囲 12-199週間)脾臓/肝臓と消化管で23週間(範囲 12-81週間)であった。トセラニブの投与量の中央値は2.5mg/kg(範囲 1.6-3.5mg/kg)であり、90%(45/50)で週に3回の投与であった。治療は一般によく許容され、60%(30/50)の猫が有害事象を経験した。これらの有害事象の多くが低グレード(グレード1-2)の消化管もしくは血液学的な事象であり、治療の中断および/または用量の調節で解決した。

結論と関連性
:トセラニブは猫の肥満細胞腫の患者でよく許容されるようである。この薬の生物学的活性は研究した猫で明らかである。しかしこの疾患の治療における役割を完全に解明するためには、さらなる前向き研究が必要である。 


==訳者コメント===
  • 本文を読んでいないので、利益相反などについてはわかりませんが、アブストラクトはだいぶポジティブに書かれている印象を受けます。
  •  本文を読まないとトセラニブの治療効果が全くわからないアブストラクトになっていると思います。ちょっとひどいですね。

Palerme, Jean-Sébastien, et al.
"Clinical Response and Side Effects Associated with Testosterone Cypionate for Urinary Incontinence in Male Dogs." 
Journal of the American Animal Hospital Association53.5 (2017): 285-290.

PubMedリンク
本文:無料公開なし

==アブストラクト===
尿道括約筋機能不全(USMI)は雌犬よりも雄犬ではめったに報告されていない。雄のUSMIをコントロールするための内科療法の有効性を評価した報告はわずかであり、ほとんど成功していない。

この症例シリーズで、我々はUSMIの雄犬8頭にシピオン酸テストステロンを中央値1.5mg/kg、筋肉内注射、4週間毎で投与し、効果を報告する。反応性は医療記録の再調査と飼い主への電話での質問によって評価した。飼い主の評価によれば、8頭中3頭(38%)で良好〜最良の反応が報告され、8頭中1頭(12%)でわずかな反応が報告され、8頭中4頭(50%)で反応に乏しかったと報告された。有害事象は報告されず、2症例で治療を継続する利益は十分だと判断された。

この症例シリーズで報告された結果は、雄犬のUSMIに対してシピオン酸テストステロンは有効で安全な治療オプションになるかもしれないことが示唆された。 


==訳者コメント===
シピオン酸テストステロンは日本国内で流通していない薬のようです。

シピオン酸テストステロン(KEGG DRUGへリンク)
 

Custead, M. R., H. Y. Weng, and M. O. Childress.
"Retrospective comparison of three doses of metronomic chlorambucil for tolerability and efficacy in dogs with spontaneous cancer." 
Veterinary and comparative oncology (2016).

PubMedリンク
本文:Google ScholarからReseachGateで入手可能(PDF

==アブストラクト===
 この研究の仮説は、高用量のクロラムブシルによるメトロノーム療法は、有意な有害事象の増悪なしに、転帰を改善するだろうというものである。
 88頭の犬を回顧的にスクリーニングして、クロラムブシルの利用における許容性と有効性について評価し、前向きにメトロノミックな経口投与の日量について
4mg/m26mg/m2 8mg/m2、の比較を行った。
 許容性について78頭の犬で、有効性について70頭の犬で評価した。
4mg/m2よりも6mg/m2で、消化器の有害事象の重症度は有意に悪く、消化器の有害事象が発生するまでの時間は有意に短かった(ともにp<0.001)。 4mg/m2よりも6mg/m2で、クロラムブシルは早くに投与中止となった(p=0.015)。4mg/m2よりも6mg/m2で、血小板減少症が有意に早く起こった。
 高用量のクロラムブシルによるメトロノーム療法は反応を改善させることがなく、有害事象の増加と関連した。

==本文から==
※利益相反・企業の関与:助成金は受けてい無いとの記載あり

 

Horgan, Jason Elliott, Brian Keith Roberts, and Thomas Schermerhorn.
"Splenectomy as an adjunctive treatment for dogs with immune‐mediated hemolytic anemia: ten cases (2003–2006)." 
Journal of veterinary emergency and critical care 19.3 (2009): 254-261.

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本文:無料公開なし

==アブストラクト===
目的:脾臓摘出を行なった免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の犬について、患者集団、疾患の重症度、転帰を記述すること。

デザイン:回顧的症例シリーズ

施設:救急診療所/二次病院

動物:IMHAと診断された犬10頭

介入:IMHAの標準的な内科治療に脾臓摘出を追加

測定:脾臓摘出を行なった10頭のIMHAの犬の医療記録を再調査した。身体所見、臨床検査所見、重症度、治療、転帰について集団の解析を行なった。30日後の生存、30日後の内科治療の割合、30日以内の再発を転帰とした。術前術後のPCVと輸血の必要性について記述し、個々の犬で比較した。

結果:10頭中9頭が30日後に生存していた。生存した9頭中4頭はいずれの免疫抑制剤も使用していなかった。30日以内に再発をした犬はいなかった。術後3日でのPCVは、術前よりも有意に上昇していた。輸血を必要数は、術前よりも術後で有意に少なかった。

結論
:脾臓摘出の利用はiMHAの犬の転帰の改善に関連する可能性がある。


==訳者補足===
・どういった症例(内科で安定してる患者なのか、内科治療に抵抗性なのか、など)に脾臓摘出を適応したのかは本文を確認する必要があります。 

Sato, M., et al.
"A Retrospective Study on the Safety and Efficacy of Leflunomide in Dogs." 
Journal of Veterinary Internal Medicine (2017).

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本文:無料公開(PDF

==アブストラクト===
背景
:免疫介在性疾患の犬におけるレフルノミドの使用に関して、利用できる情報はほとんどない。

目的
:自然発生の免疫介在性疾患の犬の治療におけるレフルノミドの有効性と安全性を報告すること。

動物
:免疫介在性疾患を疑い管理するためにレフルノミドの治療を行なった犬92頭。

方法
:1995年1月〜2014年12月の医療記録を回顧的に再調査した。医療記録から抽出したデータには、シグナルメント、体重、基礎となるレフルノミドの適応疾患、レフルノミドの投与量、治療期間、併用薬、治療への反応を含めた。

結果
:レフルノミド投与に関連している可能性のある有害事象には、下痢(3/92, 3.3%)、無気力(2/92, 2.2%)、説明不できない出血(3/92, 3.3%)、血小板減少症(2/31, 6.5%)、肝酵素の上昇(1/16, 6.3%)が含まれた。投与量について、有害事象のある犬(n=11; 中央値 2.9mg/kg/日; 範囲1.8mg-3.6mg/kg/日)と有害事象のない犬(n=81; 中央値1.6mg/kg/日; 範囲0.8-4.3mg/kg/日)とで、有意な差があった(P<0.001)。治療の反応性は17頭で評価できた。17頭の犬のうち、12頭(70.5%)でレフルノミドを使用することで明らかに良い反応が得られた。投与量について、治療に反応した犬(n=12; 中央値 1.9mg/kg/日; 範囲1.0mg-3.5mg/kg/日)と反応しなかった犬(n=5; 中央値1.7mg/kg/日; 範囲1.0-2.0mg/kg/日)とで、有意な差はなかった(P=0.22)。

結論と臨床的重要性
:今回の結果はレフルノミドの開始用量は、現在推奨されている3-4mg/kg/日よりも、2mg/kg/日であるべきだということを示唆している。
 

==訳者補足===
・確かに有害事象のある犬の方が投与量が多い傾向がありますが、発生率は高くなさそう(11/92, 12%)です。
・一方で、反応性についての検討はn数がとても少なく、この結果から低い用量でも治療効果に問題がないというのは、いささか言い過ぎかもしれません。
・そのため、投与量を低くすべきという結論も早計かもしれません。 

Ros, Linnea, Bodil Ström Holst, and Ragnvi Hagman.
"A retrospective study of bitches with pyometra, medically treated with aglepristone." 
Theriogenology82.9 (2014): 1281-1286.

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本文:無料公開(PDF

==アブストラクト===
 子宮蓄膿症は未避妊の雌犬で一般的な命に関わる疾患であり、子宮に対するホルモンによる影響と細菌感染の組み合わせによって起こる。治療の選択は卵巣子宮摘出術であるが、いくつかの内科治療の選択肢もある。抗菌薬との組み合わせによって用いられる一般的な内科的治療薬は、プロジェステロン受容体遮断薬、プロスタグランジン、ドパミン作動薬である。
 この研究の目的は、子宮蓄膿症の未避妊の雌犬にプロジェステロン受容体遮断薬であるアグレプリストンの治療を行なったあと、長期的な回復と繁殖能力を評価することである。
 スウェーデン農業大学動物病院(
University Animal Hospital, Swedish University of Agricultural Sciences)に9年間のうちに来院した子宮蓄膿症の未避妊の雌犬28頭のデータを回顧的に調査し、オーナーへの電話調査で追跡を行なった。雌犬はアグレプリストンを10mg/kgの用量で、中央値で4回の投与によって治療された。全ての雌犬は平均して23日間の抗菌薬の投与を受け、エンロフロキサシンが最も多く用いられた。膣からは大腸菌が最も頻繁に分離された。
 治療後6年までの結果を評価した。臨床的に健康な状態に回復した判断した回復率は75%(21/28)であり、再発率は48%(10/21)であった。治療後から再発までの平均期間は10.5ヶ月であった。治療後、交配した雌犬の69%(9/15)が子犬を出産した。治療が成功しなかった7頭のうち、6頭は子宮卵巣摘出を行い、1頭は安楽死を行なった。
 結論として、抗菌薬と組み合わせたアグレプリストンの治療の成功率は75%で、再発率は48%であった。

==本文から===
※利益相反の開示見当たらず、企業関与も不明

・平均年齢±SD:5.5歳±3.8 範囲:1歳ー14歳
平均体重±SD:23.0kg±16.0 範囲:3kgー64kg


==訳者補足===
・抗菌薬との組み合わせによる治療効果なので、純粋にアグレプリストンの治療効果を反映した結果とは言えないと思いますが、無治療や抗菌薬単独の治療との比較は倫理的に難しいので仕方がないのかと思います。



 

Wiles, Valerie, et al. "Retrospective evaluation of toceranib phosphate (Palladia) in cats with oral squamous cell carcinoma." Journal of feline medicine and surgery 19.2 (2017): 185-193.

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本文:無料公開なし

==アブストラクト===
目的
:この研究の目的は猫の口腔内扁平上皮癌の治療としてトセラニブの臨床的な有用性と有害事象の特徴 を決定することである。

方法
:2010ー2014年の間に口腔内扁平上皮癌と診断されてトセラニブによる治療を受けた猫の医療記録から得られたデータと、トセラニブや殺細胞性化学療法、放射線治療などの治療を受けていない猫の医療記録のデータと比較し、猫におけるトセラニブの治療反応と有害事象の特徴を決定した。NSAIDsの併用は許容した。

結果
:46頭の口腔内扁平上皮癌の猫が含まれ、23頭がトセラニブの投与を受けており(グループ1)、23頭がトセラニブの投与を受けていなかった(グループ2)。グループ1の全体の生物学的反応率は56.5%であった。 中央生存期間はトセラニブ投与の猫で123日であり、トセラニブを投与していない猫の45日よりも有意に長かった(p=0.01)。トセラニブの投与で維持病変以上の反応が得られた猫では、非進行生存期間(P<0.0001)と中央生存期間(P=0.0042)が、進行病変の猫よりも有意に長かった。NSAIDsの投与も全ての猫における生存期間の有意な改善と関連していた(p=0.0038)。食欲不振がよくみられたがが、基礎疾患による影響かもしれない。トセラニブは猫によく許容され、最も多い副作用は軽度な消化器毒性であった。

結論と関連性
:トセラニブは口腔内扁平上皮癌の猫によく許容され、特にNSAIDsと併用された場合に生存期間を改善させた。NSAIDsの投与も同様に生存期間を改善させており、今回の回顧的な調査からはトセラニブとNSAIDsの相対的な利益について評価することは困難だった。生存期間を改善させていはいるが、長期的な予後は不良のままである。トセラニブはよく許容され生存期間を改善する可能性があるため、もっと持続的な反応が得られるように、前向き研究によって単剤での反応性や、集約的治療の一部としての反応性について評価されることが望まれる。

Loyd, Kimberly A., et al. "Retrospective evaluation of the administration of 25% human albumin to dogs with protein‐losing enteropathy: 21 cases (2003–2013)." Journal of Veterinary Emergency and Critical Care 26.4 (2016): 587-592.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27159733

本文:無料公開なし 

==アブストラクト===
目的:特発性の炎症性腸疾患(IBD)と蛋白漏出性腸症(PLE)と診断された犬への、25%ヒトアルブミン(HSA)の投与について記述すること。第2の目的は急性もしくは遅発性の有害事象についてと、これらの反応を防ぐためのコルチコステロイドの効果についてを報告すること。

デザイン:回顧的研究(2003-2013)

環境:民間の二次動物病院

動物:PLEと特発性IBDと診断され、25%ヒトアルブミンを1回以上投与された家庭犬21頭。汎低タンパク血症で、アルブミンが<1.5g/dL、血管外の液体貯留があり、病理組織学的に特発性IBDと診断され、完全な医療記録のある犬を組み入れた。

介入:なし

主な結果 :21頭中、2頭(9.5%)で急性反応に一致する徴候がみられ、そのうち1頭は反応が重篤であったために安楽死された。さらに2頭(9.5%)で遅発型反応に一致する徴候がみられ、うち1頭はその反応がみられた5日後に安楽死された(反応と安楽死との関連は不明)。コルチコステロイドの投与は有害事象の発生に影響を与えていないようであった。

結論:この回顧的研究では、PLEによる中等度から重度の低アルブミン血症 の犬への25%ヒトアルブミンの投与は急性もしくは遅発性の有害事象と関連することがあり、その中には重篤で致死的なものもある、ということを示した。


==訳者補足===
・国内で入手可能なアルブミナーには5%と25%の製剤があります。

・こうした薬剤を使用する場合には、使用する目的を明確にしておくべきかと考えます。”アルブミンを上げること”が目的ではなく、”どういった目的のためにアルブミンをあげたいのか”を明確にして、使用の是非を考えるようにしたいです。 

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