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カテゴリ: 輸液

Fröhlich, Laura, et al.
"Postobstructive diuresis in cats with naturally occurring lower urinary tract obstruction: incidence, severity and association with laboratory parameters on admission."
 
Journal of feline medicine and surgery 18.10 (2016): 809-817.

PubMedリンク PMID:26179597
本文:googlescholarからresearchgateで入手可能(全文) 

タイトル:自然発生の下部尿路閉塞のある猫における閉塞後利尿;発生率、重症度、 および入院時の検査パラメータとの関連

==アブストラクト===
目的:この回顧的研究の目的は、猫において尿路閉塞解除後の閉塞後利尿の実際の発生率を調べ、閉塞後利尿に関連する血液および尿のパラメータの変化を同定し、輸液療法の影響を評価することである。

方法:尿道閉塞があり尿道カテーテルの挿入で治療された雄猫57頭の医療記録を回顧的に分析した。4時間ごとの絶対的な尿排出量ml/kg/hrと、尿流を再確立させたあとの48時間の間の任意の時点での多尿(尿量 >2ml/kg/hr)の猫の発生率、について調べた。さらに、輸液療法に関連した閉塞後利尿は、その後の少なくとも2つの時点で投与された輸液量を上回る尿量と定義した。多尿および輸液療法に関連した閉塞後利尿を、血液と尿の検査パラメータとの関連について調べた。

結果
:4時間後に、74.1%(40/54)の猫が多尿を示し、尿の排泄量が>2mi/kg/hrとなっった。代謝性アシドーシスは46.2%の猫で存在した。静脈血pHと重炭酸は、4時間後の尿排泄量と逆相関した。カテーテル挿入後48時間以内の閉塞後利尿の全体での発生率は87.7%であった。すべての時点における、時点xでの静脈輸液の投与速度と、時点x+1での尿排泄量は有意な相関があった(時点0での投与速度と4時間後の尿排泄を除く)。輸液療法関連の閉塞後利尿は21/57頭(36.8%)でみられた。

結論と重要性
:閉塞後利尿は、尿道閉塞の治療をした猫でよくある所見であり、非常に顕著な場合がある。静脈血のpHが実際に腎臓の濃縮能に干渉するのかどうかを決定するためにはさらなる研究が必要となる。この研究での閉塞後利尿と輸液関連閉塞後利尿の猫の頻度の相違(87.7% vs 36.8%)は、自然発生した閉塞性の猫下部尿路疾患の猫で、投与した静脈輸液療法が多尿の発生率を促進する場合があることを示している。
 

Ostroski, Cassandra J., Kenneth J. Drobatz, and Erica L. Reineke.
"Retrospective evaluation of and risk factor analysis for presumed fluid overload in cats with urethral obstruction: 11 cases (2002–2012)." 
Journal of Veterinary Emergency and Critical Care 27.5 (2017): 561-568.

PubMedリンク PMID:28752928
本文:無料公開なし

タイトル:尿道閉塞の猫における体液過剰の推定に対する回顧的評価とリスク因子の分析;11症例(2002−2012年)

==アブストラクト===
目的
: 尿道閉塞と体液過剰のある雄猫における患者特徴、治療、および転帰について記述し、体液過剰の発症に関わるリスク因子を決定すること。

デザイン
:回顧的症例対照研究、2002-2012年。

動物
:尿道閉塞があり、体液過剰の疑いから二次的に発症した呼吸障害のある11頭の家庭猫と、体液過剰のない尿道閉塞の対照猫50頭。

介入
:なし。

方法と主な結果
:尿道閉塞と体液過剰のある猫の医療記録を同定した。体液過剰は、静脈輸液を受けている間に体腔内液体貯留もしくは肺水腫に続発した呼吸障害の発症と定義した。体液過剰のリスク因子を特定するために、体液過剰を発症した猫の変数について、同時期の体液過剰のない尿道閉塞からランダムに選択した の対照群の変数と比較した。解析された変数には、患者のシグナルメント、過去の治療歴、血清生化学データ、呼吸数、心臓聴診の異常、入院時収縮期血圧、静脈内輸液投与、胸部画像、治療、入院期間と費用、および転帰、を含めた。エコー検査により心疾患が、体液過剰の猫の5/6頭で同定された。入院の費用(2.9倍)と入院期間の中央値(4.1日vs.1.8日)は、体液過剰の猫で優位に高かった。体液過剰の猫は、輸液のボーラス投与を受けていることが多く(オッズ比 5.1;95%信頼区間 1.3-20;p=0.014)、心雑音(オッズ比 4.5;95%信頼区間 1.1-18;p=0.028)またはギャロップ音(オッズ比 75;95%信頼区間 8.1-694;p=0.0001)を発生することが多かった。

結論
:体液過剰は尿道閉塞の治療の合併症となり得る。来院時の輸液のボーラス投与、および治療中の心雑音またはギャロップ音の発生は、臨床的に最も有用なリスク因子として同定された。体液過剰の発生は、入院費用と入院期間の有意な増加と関連するが、死亡率の増加とは関連しなかった。

 

Guillaumin, Julien, et al.
"Influence of hang time and location on bacterial contamination of intravenous bags in a veterinary emergency and critical care setting." 
Journal of Veterinary Emergency and Critical Care (2017).

PubMedリンク
本文:無料公開なし

==アブストラクト===
目的
:獣医救急室(ER)と集中治療室(ICU)における静脈輸液バッグの液体とポートの細菌汚染率を評価すること。

デザイン
:実験モデル

設定
:大学病院内に吊るされてる1Lの乳酸平衡電解質液の静脈輸液バッグ90個

介入:バッグはERの2ヶ所(シンクとゴミ箱)とICUの1ヶ所(シンク)に11日間吊るした。バッグは臨床での使用をシュミレートするため、滅菌針で1日に3回穿刺した。注入ポートを消毒し、0,2,4,7,10日目に液体を50mlずつ繰り返し収集した。液体と注射ポートについて好気性菌の培養を行なった。2回連続して同様の表現型の細菌の増殖を汚染と定義した。0日目からの液体の汚染率の増加を正確2項検定を用いて試験した。場所間のポートの汚染率はフィッシャーの正確検定を用いて試験した。

主な結果
: 注射ポートにおける複合細菌増殖は10日目に平均8.1(95%信頼区間 0.005-16.2)cfu/ポートに達した。0,2,4,7日目における複合ポート汚染はそれぞれ3.3%、11.1%、17.8%、31.1%だった。ポートの汚染はERとICUで同様だった。しかし、ポートの汚染はゴミ箱エリア(16.7%)よりもシンクエリア(38.3%)で高かった(P=0.032)。0日目、2日目に汚染された液体バッグはなかった。4日目、7日目の液体バッグの汚染率は1.1%と4.4%であった。汚染されたバッグは全てERのものであった(6.7% 95%正確二項検定信頼区間 1.9-16.2%)。

結論
:注射ポートの汚染は7日目に31.1%に達した。バッグがシンクの横にかけられていると汚染が起こりやすかった。我々のバッグの穿刺モデルでは、液体の汚染は2日目から4日目の間に起こった。
 

==訳者コメント===
・汚染の割合は消毒の仕方や穿刺の回数などによって変わり得ると思います。 

Cavanagh, Amanda A., Lauren A. Sullivan, and Bernard D. Hansen. "Retrospective evaluation of fluid overload and relationship to outcome in critically ill dogs." Journal of Veterinary Emergency and Critical Care 26.4 (2016): 578-586.

PubMedリンク

本文:無料公開なし 

==アブストラクト===
目的
:軽症患者に比べて重症患者では入院中の輸液過剰(fluid overload:FO)のリスクが増すかどうかを決定し、輸液過剰が入院中の死亡率の増加に関連するかどうかを調べる。

デザイン:観察研究、ケース・コントロール研究(症例対照研究)

動物
:重症な犬34頭と、神経・整形疾患の術後で健康状態が比較的安定している犬15頭 

介入:なし

測定と主な結果
:基礎疾患、体重、来院時のAPPLE fastスコア(下記訳者注)、入院中の単日および複合のAPPLE fullスコア、投与された総液体量(L)、排泄された総液体量(L)、転帰、以上をデータとして記録した。輸液過剰の百分率(%FO)は以下の式で計算した。
([液体の投与量ー液体の喪失量]/1000mL / L)ー(来院時の脱水率 %) 《液体量は基準体重をもとにmL/kgとして示す》
重症な犬では、安定している手術後の犬に比べて、入院中により高い%FOに進展し(12.1 ± 11.7% vs 0.5 ± 5.2% P=0.001)、%FOが12%以上の犬うち半数(8/16)が死亡した。複合APPLE fullスコアは%FOと弱く相関したが、APPLE fast スコアと来院時の単日のAPPLE fullスコアは相関しなかった。死亡についてのオッズ比は、入院期間中のFOの%の上昇に対して1.08であった(95%信頼限界 1.02-1.59 , P=0.02)。

結論
:重症な犬は入院中に過剰輸液(FO)のリスクが上昇しており、%FO、疾患の重症度、死亡率の間には弱くではあるが有意な相関がある。この回顧的研究の結果を確認するために、前向き研究が正当化される。

==訳者補足===
注)APPLE スコア:Acute Patient Physiologic and Laboratory Evaluation Score(APPLE score)

・重症患者では輸液過剰に気をつける必要がありそうです。しかし、輸液過剰と死亡率の関係については、疾患の重症f度が交絡因子になっている可能性があるため、輸液過剰と死亡率に因果関係があるかどうかはわかりません。つまり「輸液過剰が死亡率の増加を招いているのか」「そもそも疾患の重症度が輸液過剰と死亡率の増加を招いているのか」はわかりません。そのため、輸液過剰を防げば死亡率は低下するかどうかはわからなそうです。(※詳細は本文の確認が必要です)



 

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