ねころんで探せる小動物医療のジャーナルクラブ

小動物臨床の獣医師が、臨床に役立ちそうな論文情報をちょっとづつアップします。ねころんでいても論文検索ができればいいなと。

カテゴリ: 身体診察

Ferasin, Luca, Heidi Ferasin, and Eoin Kilkenny.
"Heart murmurs in apparently healthy cats caused by iatrogenic dynamic right ventricular outflow tract obstruction."
 
Journal of Veterinary Internal Medicine 34.3 (2020): 1102-1107.


PubMedリンク PMID:32343450
本文:無料公開あり(全文

タイトル:医原性の動的右室流出路閉塞に起因する明らかに健康な猫の心雑音

==アブストラクト===
背景
:明らかに健康な猫でもルーチンな身体検査で心雑音が検出されることはよくあり、心雑音を起こす乱流の原因を特定するには最終的にドップラー心エコーが必要となる。しかし、経験豊富な臨床医であっても心エコー検査で雑音の起源が特定できない症例がいる。猫の胸壁に超音波プローブを穏やかに押し当てることで、右心室の内腔が一時的にせまくなり、心臓の異常がなくても血液の乱流を起こす可能性がある。

目的/仮説:心エコー検査中の猫の胸壁に対するエコープローブの圧迫(誘発試験)が右室の血流に与える影響を調べること。第一の仮説は、誘発試験によって右室流出路の流速が増加し、乱流を引き起こすというものである。第二の仮説は、この操作の効果は試験中の心拍数の変化とは無関係であるというものである。

動物:明らかに健康で、身体検査で心雑音がある家庭飼育の猫61頭。

方法:心雑音の検査で来院した猫723頭の心エコー検査の回顧的再調査。

結果:誘発試験中に流出路の流速が1.05±0.26から1.94±0.51m/sに増加した(p<0.0001)。誘発試験中の右室流出のピークと心拍数の間に相関はなかった(p=0.34;r=0.1237)。

結論と臨床的意義
:右室流出路閉塞とそれに関連した心雑音は、エコープローブの右胸壁への圧迫の増加によって、明らかに健康な猫で誘発される可能性がある。


==本文から===
イントロから一部抜粋
過去10年間、猫の胸壁の右側に超音波トランスデューサーで穏やかな圧力を加えると、RV中央部の内腔が一時的に狭くなり、医原性にDRVOTOが誘発され、その後血流の乱れが引き起こされることが偶然に観察されました。また、聴診器の頭を猫の右胸壁にそっと押し付けて、聴診中に可聴雑音を誘発することで、同様の現象を再現できることも確認しました。

これが今回の研究の背景のようです。

Aulakh, Karanvir S., et al.
"Influence of orthopedic examination on lameness scores and interobserver and intraobserver agreement in dogs with naturally occurring elbow osteoarthritis."
 
Veterinary Surgery (2020).

PubMedリンク PMID:
32022284
本文:無料公開なし

タイトル:自然発生性の変形性肘関節症のある犬にいて整形外科的検査が跛行スコアに与える影響と観察者内および観察者間の一致

==アブストラクト=== 
目的
:変形性肘関節症のある犬の跛行をスコアリングする際の数値評価スコアと視覚的評価スコアに対する整形外科的検査の影響を調べ、ビデオグラフィック歩行分析に基づいて数値評価スコアと視覚的評価スコアの観察者内および観察者間の一致について評価すること。

デザイン:前向き盲検研究。

動物:レントゲン検査で変形性肘関節症が確認された家庭飼育犬18頭。

方法
:整形外科的検査の前と直後のすべての犬の歩行と小走りのビデオを得た。すべてのビデオはランダムに並べられた。ビデオのタイミングを知らない6人の観察者が、数値評価スコアと視覚的評価スコアの両方を2回、少なくとも2週間の間隔をあけて独立して割付された。スコアは混合分散解析で評価し、観察者間の一致はクラス内相関係数(ICC)で評価した。

結果
:整形外科てき検査の前と後で、歩行と小走りにおける数値評価スコアと視覚的評価スコアに差は検出されなかった。整形外科的検査の前の数値評価スコアと視覚的評価スコアは、小走りよりも歩行の方がそれぞれのスコアで0.17(p=0.0018)および3.54(p=0.0019)低かった。すべての観察者における両スコアのクラス内相関係数は>0.9であった。

結論
:変形性肘関節症の犬において整形外科的検査は、数値評価スコアと視覚的評価スコアを悪化させなかった。観察者間および観察者内の一致は、両方の跛行スコアで高かった。

臨床的意義
:変形性肘関節症の犬では、総合的な整形外科的検査のタイミングに関係なく、歩行評価ののちに跛行がスコア化されるだろう。 

Intarapanich, Nida P., et al.
"Characterization and Comparison of Injuries Caused by Accidental and Non‐accidental Blunt Force Trauma in Dogs and Cats." 
Journal of forensic sciences 61.4 (2016): 993-999.

PubMedリンク PMID:27364279
本文:googlescholarからresearchgateで入手可能(全文) 

タイトル
:犬と猫における事故および事故ではない鈍的外傷に起因する傷害の特徴と比較

==アブストラクト===
自動車事故は、しばしば 事故ではない傷害との区別が困難である。この回顧的症例対照研究では、自動車事故の外傷が判明している動物を、事故ではない外傷が判明している動物と比較した。自動車事故後に治療をうけた426頭の犬と猫と、事故でない傷害の50頭の医療記録を評価した。自動車事故に有意に関連する傷害には、骨盤骨折、気胸、肺挫傷、擦過傷、および脱手袋傷があった。事故でない傷害に関連した損傷には、頭蓋骨、歯、脊椎、および肋骨の骨折と、胸膜出血、爪の損傷、古い骨折の証拠があった。これらの傷害に対するオッズ比を報告した。自動車事故の肋骨の骨折は、体の片側性の発生がみられ、頭側肋骨の骨折が起こりやすく、一方、事故でない傷害の肋骨骨折では両側性で、頭側尾側のパターンのない発生がみられた。エビデンスに基づく傷害のパターンの確立は、臨床医が外傷の原因を鑑別するのに役立ち、動物の虐待の証拠の作成と起訴に役立つ可能性がある。
 

Porter AE, et al. 
"Evaluation of the shock index in dogs presenting emergencies." 
Journal of Veterinary Emergency and Critical Care (2013).

PubMedリンク
本文:無料公開あり(PDF

==アブストラクト===
目的(1)健康な犬でのショック指数(shock index; SI)[SI=心拍数(HR)/収縮期血圧(SBP)と定義]の参照範囲を決定すること。(2) 健康な犬と、救急(ER)に来院したショックであるもしくはない犬とでショック指数を比較すること。

デザイン:前向き研究

動物:臨床的に正常な犬68頭、ERに来院したショック状態の犬18頭、ERに来院したショックのない犬19頭。

施設:大学の教育病院

介入:末梢静脈もしくは中心静脈の血液採取

測定と主な結果:来院をシュミレートした健康な犬と、ERに来院した犬(ショック有or無)とで、心拍数と収縮期血圧を記録した。ショック状態の犬のSIの中央値は1.37(0.87 - 3.13)であり、他のグループよりも有意に高かった;ショック状態にない犬のSIの中央値は0.73(0.56 - 1.20)であり(P<0.0001)、健康な犬でのSIの中央値は0.78(0.37 - 1.30)であった(P<0.0001)。ROC曲線解析ではSIのカットオフとして1.0が示唆され、健康な犬とショック状態の犬を比較するとROC下面積(AUROC)が0.89(特異度89、感度90)、ショックのない犬とショック状態の犬との比較では0.92(特異度95、感度89)であった。

結論:ショック指数(SI)は簡便で非侵襲的な患者のパラメーターであり、健康な犬やショックではない状態で救急に来院した犬に比べて、ショック状態と考えられる犬で高かった。SIの測定は救急の患者臨床評価として有益である可能性がある。 


==本文から===

・ショックの有無は血漿乳酸値をもとに判定されている。≦1.5mmol/Lはショックなし、>5mmol/Lはショックあり。
・収縮期血圧が測定できなかった症例、高乳酸血症の原因疾患がショック以外に診断された症例は除外した。 

・研究期間中に138頭の犬が来院し研究の対象となり、19頭がショックのない犬、18頭がショックの犬とされた。

・ショックのない犬の疾患;胃腸炎/消化管異物(4)、脊髄疾患(3)、マイナーな外傷(3)、けいれん発作の可能性(2)、元気食欲の低下した糖尿病(2)、発熱(1)、上室性頻脈(1)、皮膚腫瘤(1)、限局した腫瘍(1)、中毒の可能性(1)

・ショックの犬の疾患:心タンポナーデ(6)、胃拡張-捻転(3)、腹腔内出血(2)、肺炎(1)、重度の鼻出血(1)、インスリノーマによる虚脱(1)、免疫介在性溶血性貧血(1)、重度の多発外傷(1)、術中に起こった呼吸停止後(1)、細菌性腹膜炎(1)。


表)各集団の特徴と測定値
001

==訳者コメント===
・本文を読むとショックのゴールドスタンダードとして乳酸値が使われています。それ自体は良いと思いますが、乳酸値≦1.5mmol/Lをショックなし、>5mmol/Lをショックありとしており、1.5<乳酸値≦5の患者は解析に含まれていないということになります。 
・ こうしたグレーゾーンを無視した両極の2群でカットオフ値を出すと、診断精度は高く出ますが、実際の臨床で
1.5<乳酸値≦5のグレーゾンの患者を、同じ精度で診断できるかどうかという点には注意が必要ではないかと思います。感度、特異度(からの尤度比)をそのまま使えるかどうか、注意が必要と思います。
 

↑このページのトップヘ