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カテゴリ: 老齢医学

Marynissen, S. J. J., et al.
"Proteinuria in apparently healthy elderly dogs: persistency and comparison between free catch and cystocentesis urine." 
Journal of veterinary internal medicine31.1 (2017): 93-101.

PubMedリンク PMID:28019038
本文:無料公開あり(全文

タイトル:健康にみえる高齢犬における尿蛋白;持続性と自然排尿と膀胱穿刺の尿の比較

==アブストラクト=== 
背景:ヒトの高齢者の最大25%に尿蛋白があり、しばしば基礎病変に関連している。高齢犬における尿蛋白の存在に関するデータはほとんどない。

目的:健康にみえる高齢犬における尿蛋白の存在と持続性について記述し、自然排尿(free catch)と膀胱穿刺の尿サンプルの尿蛋白クレアチニン比(UPC)を比較すること。

動物:100頭の健康にみえる高齢犬。

方法:前向き研究。100頭の高齢犬の飼い主に2つの自然排尿のサンプルを採取するように依頼した。犬は、飼い主の認識をもとに健康と判断され、理想体重に基づいた年齢チャートを用いて、高齢(senior)または老齢(geriatric)の犬を定義した。自然排尿と膀胱穿刺で採取した尿のUPCを比較した。沈渣の検査ではタンパク尿を説明できない場合に、顕性蛋白尿および境界タンパク尿はそれぞれ、UPC>0.5、および0.2-0.5とて定義した。タンパク尿は、両方の採取時間で存在する場合に持続性とみなした。

結果:ベースラインで、71人の飼い主が自然排尿の採取に成功した。11%の犬が顕性タンパク尿、14%が境界タンパク尿、75%が非タンパク尿であった。37の繰り返しの尿サンプルが利用可能であり、間隔の中央期間は31日(範囲 10-90)であった。犬の19%で持続的にUPCが増加(>0.2)し、持続的な顕性蛋白尿が8%でみられた。自然排尿と膀胱穿刺で採取された尿のUPCの間には強い相関(p=0.88)がみられた。

結論と臨床的意義
:調査した犬の19%で持続的な蛋白尿がみられ、 これらの所見は蛋白尿の測定が高齢犬の健康スクリーニングの一部であるべきだということを強調する。犬のUPCでは、自然排尿の尿は膀胱穿刺の良い代替となる。
 

Davies, M.
"Geriatric screening in first opinion practice–results from 45 dogs." 
Journal of Small Animal Practice  53.9 (2012): 507-513.

PubMedリンク
本文:無料公開(PDF

==アブストラクト===
目的
:一次診療施設における高齢犬のスクリーリングの結果を評価して報告すること。

方法
:9歳以上の犬で、病歴聴取、身体検査、尿検査を含めた健康スクリーニングを前向きに実施。

結果
:45頭中80%の犬でそれまで認識されていなかった問題が1つ以上認識され、353の所見(平均7.8/犬)が記録された。飼い主は年齢に関連した疾患の重大な徴候について認識、報告しないことが多かった。しかし、睡眠の増加(31%)、聴覚の喪失(29%)、視力の喪失(20%)、歩行のこわばりもしくは跛行(22%)、"減速"(20%)の増加は最もよく報告された。 レンズの不透明度の増加(64%)、口渇感の増加(58%)、痛み(24%)、排尿頻度の増加(24%)、変形性関節症の徴候(24%)、歯科疾患(22%)が相談時に最も多く明らかなになった。潜在的に命を脅かす結果として、呼吸不全、触診可能な腹腔内腫瘤、転移性肺疾患が含まれた。スクリーニングによって29のさらなる診断手順がなされ、10件の歯科処置、7件の医療処置、2件の外科処置、2件の安楽死処置が含まれた。

臨床的重要性
:高齢犬のスクリーニングは、生活習慣の変更および継続的なモニタリングの結果に至るような 認識されていないまたは報告されていない健康リスク要因を特定し、、また生活の質の改善のための診断調査、早期診断、内科もしくは外科的な介入に至る年齢関連疾患の徴候を特定する。

Willems A., et al. 
"Results of screening of apparently healthy senior and geriatric dogs." 
Journal of veterinary internal medicine 31.1 (2017): 81-92.

PubMedリンク
本文:無料公開(PDF

==アブストラクト===
背景:高齢犬のヘルスケアへの関心が高まっている。しかし高齢犬における身体検査や臨床検査の所見に関する科学的な情報は限られている。

目的:飼い主が健康と判断している高齢犬において、収縮期血圧(SBP)と身体検査と臨床検査の結果について記述すること。

動物:家庭犬100頭

方法:前向きに犬を集めた。飼い主はアンケートを完了した。収縮期血圧の測定、身体検査、整形学的検査、神経学的検査、直接眼底検査、シルマーティア試験を行なった。CBC、血清生化学検査、尿検査を評価した。

結果:41頭の高齢(senior)犬と59頭の高齢(geriatric)犬が含まれた。収縮期血圧の平均は170±38mmHgであり、53頭で>160mmHgであった。31頭の犬が過体重であった。心雑音は22頭で検出され、重度の歯石が21頭、一個以上の皮膚(皮下)腫瘤が56頭で認められた。32頭の犬で血清クレアチニンの上昇、29頭で低リン血症、27頭でALPの上昇、25頭でALTの上昇、23頭で白血球の減少がみられた。結晶尿、主に非定型結晶が多く検出された(62/92)。明らかな蛋白尿とボーダーラインの蛋白尿が、それぞれ13/97、18/97で検出された。4頭の犬で尿の細菌培養が陽性だった。 senior犬に比較して、geriatric犬では整形外科的問題の頻度、皮膚(皮下)腫瘤の頻度、血小板数が有意に高かった。
senior犬に比較して、geriatric犬では、体温、ヘマトクリット値、血清アルブミン、血清総チロキシン濃度が有意に低かった。

結論と臨床的重要性:身体検査と臨床検査の以上は健康に見える高齢犬で一般的なものであった。獣医師は高齢ペットの健康診断の実施やヘルスケアの改善に重要な役割を果たす。
 

==本文から===
注)senior犬とgeriatric犬は、体重毎に年齢で分けているようです。(詳細は本文のfigure1)
(9kg以下では9歳からがseniorですが、54kg以上では4歳からがseniorのようです!)
(この定義が一般的なのかどうかは調べる必要がありそうですが)


==訳者補足===
  • 高齢になれば健康そうに見えても、いろいろと問題は出てくるよというところでしょうか。経験的にも一致する部分が多いように思います。
  • こうしたデータから、まあ高齢だしねと多少の問題は受け流すか、高齢になるといろいろ問題が出るから検査受けなきゃダメですよというかは、いろいろ意見はあるかもしれません。
  • 少なくともこうした異常の検出は、それ自体が目的ではありません。異常を見つけることが目的になると病気を作ることが目的になってしまいかねないと思います。それがアクションの変更や予後の改善につながるのかどうかという点が大事ではないかと思います。 

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