ねころんで探せる小動物医療のジャーナルクラブ

小動物臨床の獣医師が、臨床に役立ちそうな論文情報をちょっとづつアップします。ねころんでいても論文検索ができればいいなと。

カテゴリ: 生殖器

Del Magno, Sara, et al.
"Surgical treatment and outcome of sterile prostatic cysts in dogs." 
Veterinary Surgery (2021).


PubMedリンク PMID:33960429
本文:googlescholar経由で入手可能(全文

タイトル:犬の無菌性前立腺嚢胞の外科治療と転帰

==アブストラクト===
目的:無菌性の前立腺嚢胞のある犬の大きな集団における外科治療と転帰について記述すること。

研究デザイン:回顧的研究。

動物:家庭飼育犬44頭。

方法:無菌性前立腺嚢胞があり、6か月以上の追跡をできた犬を組み入れた。臨床的項目、術式、合併症、再発、および転帰(電話または再診で)を記録した。

結果:実質外および実質内の嚢胞がそれぞれ29頭と11頭で診断された。4頭は両方のタイプであった。実質外の嚢胞は部分的切除と大網留置(n=22)および嚢胞の完全切除(n=7)によって治療された。実質内の嚢胞はすべて廃液と嚢胞内への大網留置によって治療された。両方のタイプの嚢胞をもつ犬では、嚢胞は大網留置で治療された。44頭中39頭(88.6%)で治癒した。術中の合併症は1頭(尿道の裂傷)でみられた。3頭の犬で死亡に至る重篤な合併症(乏尿性じんん障害、心臓不整脈、尿路閉塞)が起こった。軽度な合併症(n=10)として一時的な尿失禁(n=2)、永続的な尿失禁(n=5)、尿閉(n=2)、排尿障害(n=1)がみられた。実質外の嚢胞の犬の2頭で再発がみられた。長期フォローアップの中央値は528日(範囲 250-730日)であった。39頭の犬で、長期フォローアップの時点で前立腺疾患に関連した徴候はなかった。

結論:無菌性の前立腺嚢胞の部分および完全な嚢胞切除および/または大網留置は、多くの犬で臨床徴候の解消に至ったが、術後の尿失禁は頻繁にみられた。

影響
:この研究は、外科的に治療された犬の無菌性前立腺嚢胞の大きな症例シリーズであり、予後と合併症の割合に関する情報を提供する。

Evans, Brolin J., et al.
"Factors influencing complications following mastectomy procedures in dogs with mammary gland tumors: 140 cases (2009–2015)." 
Journal of the American Veterinary Medical Association 258.3 (2021): 295-302.

PubMedリンク PMID:33496617
本文:無料公開なし

タイトル:乳腺腫瘍がある犬における乳腺切除後の合併症に影響する因子;140症例(2009-2015)

==アブストラクト===
目的
:さまざまなタイプの乳腺切除の術式における合併症の割合を調べ、合併症のリスクを上昇させる因子を特定し、そうした合併症の結果を判断すること。

動物
:乳腺腫瘍を治療するために154回の乳腺切除術をうけた雌犬140頭。

方法
:2009年7月から2015年3月の間のPenn Vetシェルター犬乳腺腫瘍プログラムにおける犬の医療記録をレビューした。シグナルメント、腫瘍の特徴(腫瘍の数やサイズ、良性または悪性、両側か片側)、乳性切除のタイプ、麻酔時間、卵巣子宮摘出術または卵巣摘出術の同時実施、外科医の資格、手術後の抗菌薬の投与、術後ドレーンの設置、および合併症(漿液種、膿瘍、離開、感染)に関するデータを収集した。入院を必要とする合併症を記録した。フィッシャーの直接確率検定を使用して、関心のある変数と合併症の関連を評価した。多変量解析をもちいて、合併症のリスクの増加と独立して関連する因子を特定した。

結果
:すべての手技の乳腺切除術後の合併症の割合は16.9%(26/154)であり、そのうち9件(34.6%)が入院を必要とした。体重が重いこと、両側の乳腺切除の実施、および術後の抗菌薬投与は、合併症のオッズの有意な増加と関連した。術後抗菌薬投与は合併症のオッズと関連したが、乳腺切除の術式によってさまざまであった。連続した乳腺の切除を行い、術後に抗菌薬の投与を受けなかった犬では、合併症のオッズが最も高かった。同時に卵巣子宮切除または卵巣切除を行った犬では、合併症のオッズが有意に減少した。

結論と臨床的意義
:過去に避妊手術済みの大型犬でもっとも広範囲の乳腺切除術の手技を行うと、術後の合併症を起こす可能性が高くなった。


==本文から補足===
154件の手術のうち、66件で術後抗菌薬投与が行われ、88件では行われなかった。合併症として術後感染/膿瘍を起こした14件中、13件で術後抗菌薬の投与が行われていた。

Gedon, Julia, et al.
"Canine mammary tumours: Size matters–a progression from low to highly malignant subtypes." 
Veterinary and Comparative Oncology.


PubMedリンク PMID:32945086
本文:無料公開なし

タイトル
:犬の乳腺腫瘍;サイズが重要ー低悪性度から高悪性度への進行

==アブストラクト===
この研究の目的は乳腺腫瘍のサイズと悪性度の増加との間の関連性の可能性について評価することである。合計1,459の乳腺腫瘍、625頭の犬のデータを回顧的に解析した。80.3%の犬が中性化されておらず、診断時の年齢の中央値は9.7±2.5歳齢であり、75.8%が純血種であった。体重の中央値は20.0kgであった。悪性腫瘍(n=580)は、良性腫瘍よりも有意に大きく(平均値で1.94cm vs 0.90cm;p≦0.00001)、腫瘍サイズの増加と良性から悪性への変化の間には正の相関があった(p≦0.0001;r2=0.214)。悪性腫瘍を4段階の悪性度の増加(混合/単純/固形/退形成癌)に分類すると、腫瘍サイズの増加とより悪性度の高い段階との間に有意な正の相関が示された(p≦0.0001;rs=0.195)。多くの場合で、悪性度の高い腫瘍は悪性度の低い病変内で発生することがわかり、悪性腫瘍のサブタイプないでもさらに進行するという概念を支持した。複数の腫瘍がある患者では、悪性腫瘍の腫瘍サイズの平均は、単一の種ようをもつ患者よりも小さかった(1.67cm vs 2,71cm;p<0.0001)。これらの所見は、悪性腫瘍が良性から悪性に進行するだけでなく、低悪性度から高悪性度へも進行することを示唆している。それゆえ、数mmの直径の増加が患者の転帰に大きな影響を与える可能性がある。

Walz, Jillian Z., et al.
"Definitive‐intent intensity‐modulated radiation therapy for treatment of canine prostatic carcinoma: A multi‐institutional retrospective study." 
Veterinary and Comparative Oncology (2019).

PubMedリンク PMID:31811693
本文:無料公開なし

タイトル
:犬の前立腺癌に対する根治目的の強度変調放射線治療;多施設回顧的研究

==アブストラクト=== 
 犬の前立腺癌に対する標準的なケアで現在認識されているものはない。この回顧的研究は、前立腺癌のある犬に根治目的の強度変調放射線治療を行った後の転帰を評価することである。

 医療記録のレビューを行い、4つの施設で前立腺癌の治療のために根治目的の強度変調放射線治療を行った患者18頭を含めた。診断は7/18頭(39%)で偶発的だった。5頭(28%)で診断時に領域リンパ節への転移があった。17頭はNSAIDsの併用を行い、15/18頭(83%)は最大耐量の化学療法をうけ、様々な薬剤とプロトコルが使用された。照射された放射線量の合計は48-54Gyの範囲(中央値 50Gy)であり、日の照射は2.5-2.8Gyへ分けられた。1頭は放射線治療を完了する前に安楽死された。急性毒性は9頭でみられ、グレード1-2の下痢が観察された毒性で最も多かった。晩発障害の疑い(尿道狭窄、尿管狭窄、後肢の浮腫)は3頭で観察された。放射線治療後のイベントフリー生存期間の中央値は220日であり、全体の中央生存期間は563日であった。局所進行は7頭でみられ、その中央値は241日であった。全体中央生存期間は偶発的に診断された犬で有意に長かった(581日 vs 症候性の犬220日 p=0.42)。イベントフリー生存期間は最大耐量化学療法を行った犬で有意に長く(241日 vs 25日 p<0.001) 、来院時に転移がない犬に比べて転移がある犬で有意に短かった(388日 vs 109日 p=0.008)。

 これらの所見は、前立腺癌の犬の局所コントロールとして
根治目的の強度変調放射線治療が価値のある治療オプションであり、中程度の毒性のリスクがあることを示している。
 

Goto, Sho, et al.
"A retrospective analysis on the outcome of 18 dogs with malignant ovarian tumours." 
Veterinary and Comparative Oncology.

PubMedリンク PMID:32700381
本文:無料公開なし

タイトル
:悪性卵巣腫瘍の犬18頭の転帰についての回顧的研究

==アブストラクト=== 
悪性卵巣腫瘍の犬も予後に関しては利用できるエビデンスがほとんどない。この回顧的研究の目的は、手術±補助治療による治療をうけた悪性卵巣腫瘍のある犬の転帰を調べ、予後因子を決定することである。18頭の犬が調べられ、年齢の中央値は12歳齢(範囲 7-15歳)、体重の中央値は6.9kg(範囲 2.3-17.8kg)であった。病理組織学的診断により、顆粒膜細胞腫が最も多いタイプ(n=9)であり、ついで未分化胚細胞腫(n=5)、腺癌(n=4)であった。11頭は手術だけうけた。7頭は手術と化学療法および/または放射線治療による補助治療をうけた。卵巣腫瘍による死亡のみを考慮した場合の中央生存期間は1009日であり、 中央生存期間を予測する因子には、単変量解析でT分類(≧T3 443日 vs ≦T2 1474日、p=0.002)、転移病変の存在(あり 391日 vs なし 1474日、p<0.001)、およびリンパ管浸潤(
あり 428日 vs なし 1474日、p=0.003)があった。顆粒膜細胞腫の犬の中央生存期間は、未分化胚細胞腫瘍と腺癌の犬のものよりも長そうだったが、その差は統計学的には有意ではなかった(1474日 vs 458日、p=0.10)。良好な予後を考えると、悪性卵巣腫瘍の犬に対して、早期のステージでは特に、積極的な治療が推奨される。診断時に転移があったとしても、転移のある犬の半分は1年以上生存した。

Bjørnvad, C. R., et al.
"Neutering increases the risk of obesity in male dogs but not in bitches—A cross-sectional study of dog-and owner-related risk factors for obesity in Danish companion dogs."
 
Preventive veterinary medicine 170 (2019): 104730.

PubMedリンク PMID:31421500
本文:無料公開あり(全文

タイトル
:中性化は雄犬における肥満のリスクを上昇させるが、雌犬では上昇させない;デンマークの家庭犬の肥満に関する犬および飼い主に関連したリスク因子の横断的研究

==アブストラクト=== 
犬の肥満のリスク因子に関する知識は、効果的な予防戦略の前提条件である。この研究の目的は、デンマークのジーランド島全土の家庭犬における肥満のリスク因子を調べることである。

飼い主の犬(2歳以上、慢性疾患なし)が採用され、社会経済的特徴が異なる地域の8つの家庭動物獣医診療所で調べられた。犬のボディコンディションスコア(BCS)を2人の調査者が9ポイントスコアリングシェーマをもとに評価した。犬の飼い主は以下のことを促すアンケートに答えた;1)中性化の状態を含めた犬の特徴、2)飼い主の特徴、3)食事と運動の習慣、4)飼い主の犬への愛着。これらの因子がBCSと過体重/肥満(BCS 7-9)になるリスクに与える影響を、2つの別々の方法で解析した。

全部で268頭の犬が解析に含まれ、そのうち20.5%が過体重/肥満であった。BCSの平均は5.46であった。犬の特徴に関して、雄犬において中性化はBCSと過体重/肥満になるリスクの両方を劇的に増加させたが、雌犬では増加させなかった。BCSと過体重/肥満になるリスクは高齢の雌犬で増加し、高齢の雄犬では減少した。過体重/肥満になるリスクは、過体重および肥満の飼い主の犬で高かった。食事と運動の習慣に関しては、1日1回だけの食事がBCSと過体重/肥満になるリスクを増加させた。リラクゼーション中のおやつは、過体重/肥満になるリスクを増加させた。犬のBCSも増加させたが、それは飼い主が過体重または肥満の場合のみだった。毎日の歩行時間が長くなると、犬が過体重/肥満になるリスクが増加するが、それは
飼い主が過体重または肥満の場合のみだった。犬が庭や敷地内を自由に走れるようにしていると、過体重/肥満になるリスクが減少した。飼い主の犬への愛情は、犬のBCSや過体重/肥満になるリスクに関連しなかった。

重要かつ新たな知見は、中性化は雄犬では過体重または肥満になるリスクを増加させたが、一方で雌犬では中性化状態に関係なくリスクがあるということである。 さらに、飼い主の体重、食事習慣、犬が過体重/肥満になるリスクの間の複雑な相互作用が見つかり、それは家庭動物の肥満をワンヘルスの観点から将来の前向き研究で考慮する必要性を強調している。最後に、この研究では犬の肥満が飼い主の愛着が強すぎるためかどうかは確認できなかった。

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